クリスマスの出来事 2019年12月24日 キャンドルサービス説教

現在の世界を象徴する言葉は「分断」ではないでしょうか。わたしたちの世界は無用の対立と分断を止めることができないでいます。むしろ、わたしたちひとりひとりも分断を促し、煽る一部になっているように思えます。そのことは、多くの人が情報の発信源になりうるという時代の到来と、決して無縁ではないでしょう。

ゆっくりと慎重に行われたロウソクの火の伝達とは異なり、今やわたしたちは瞬時に偽の情報を拡散することは可能です。それは短期間で人間関係を壊すことが可能となったということです。

このような時代にあって、わたしたちには特別な能力が求められています。一つは情報の真偽を見分ける能力です。単純に言えば、疑う知性です。批判精神とも、あるいは自由とも言えます。

日本社会において、自由な批判精神や疑う知性、知的検証は育ちにくいものです。異なる意見をなるべく見えないようにするからです。その結果、少数者の意見は正しくないもの、必要のないものとして排除されがちです。

天使たちの言葉は少数者の声でした。神の子と崇められていたローマ皇帝は救い主ではないし、ユダヤ人の王だったヘロデも救い主ではないというからです。もしかするとこれは正しい情報かもしれないと疑わなければ、羊飼いも博士たちもキリストに出会うことはできなかったでしょう。

社会の分断に加担しないための能力のもう一つは、倫理というものです。仮にその情報が正しかったとしても、倫理に反するならば与しない、喜ばないという態度です。批判的かつ知的に検証した結果、正しいと判断できる意見でさえも、だれかの人権を侵害している意見ならば拒否をするという力が必要です。だから、いくらそれらしく聞こえても、「外国人は犯罪予備軍だ」「あのような職業は汚らわしい」という言葉に同調はできないのです。

逆に論理的に正しいかどうかはよく分からなくても倫理的に優れている情報には同調していくことが、分断を食い止めます。これまた日本社会では育ちにくい行動パターンです。人権教育が不十分だからです。

「今日あなたたちのために救い主が生まれた」という天使からの情報は、論理的には飛躍があり信じがたいものです。しかし、毎日の重労働に疲れる夜勤の羊飼いにとっては倫理的に優れています。

わたしたちは羊飼いが喜んだ、その喜びに同調したいと思います。それは平和の主イエス・キリストが、分断を憎み、分断する世界に平和をもたらすために誕生したからです。クリスマスのこの日、共に福音(良い情報)を発信しましょう。対立を促す情報を疑い、どんな人とも肩を組むための情報を積極的に分かち合いましょう。