2021/10/20今週の一言

とある教会の礼拝で詩編85編9-14節にもとづいてお話した内容を紹介いたします。

 ヘブライ語の詩には文法上のルール(修辞)があります。それは並行法と呼ばれるものです。本日の箇所で言えば、11節と12節が典型的な並行法です。簡単に言うと、類義語を並べるという技法です。

【11節】

慈しみまことは出会い

正義平和は口づけし

【12節】        

まことは地から萌えいで

正義は天から注がれます

11節は慈しみとまことが一体化していること、同じく正義と平和が一体化していることを示しています。出会い・口づけするからです。しかしそれだけではありません。並行法に着目しましょう。慈しみと正義も類義語であり、まことと平和も類義語です。縦同士と横同士の隣は同じ意味なのです。残るは斜めの関係ですが、12節によれば、まこと正義も類義語です。「地から」と「天から」には違いがありそうに見えますが、社会を囲む天地を創られた神の視点に立てば、どちらも同じことです。人間社会の外に、まことと正義は由来します。

一つの例外を除けばほぼすべてが連関させられています。一つの例外とは、慈しみ平和の斜めの組み合わせです。このことについては最後に申し述べます。

今お話したところまでで、慈しみ・まこと・正義・平和という四つの単語は全て類義語として用いられていることが分かります。そしてこの四つの抽象的な単語は、擬人化され登場人物のように描かれています。すべて冠詞がついていないし、単数形です。抽象概念とも固有名詞ともとれます。人間であるならば四人の仲間が食卓を囲んでいるような図です。この四人は切っても切れない仲です。たとえて言えば、病気の友人を床ごと吊り下ろしてイエスのもとに運んだ四人のような「隣人」です。(続く) JK