2022/08/17今週の一言

米国ドラマ『This Is Us』の最終シーズンを見終えました。原作は2016年から今年の5月まで現地で放映され、順次日本に配信されていたものです。全6シーズン、1シーズンに18話、1話は42分ですから、客観的には膨大な時間を数年間で注いだことになりますが、主観的にはあっという間でした。それほどに面白いドラマです。あまり内容に触れることは事柄の性質上避けたいところですが、ほんの少しだけ紹介し、わたしの喪失感を和らげたいと思います。

物語は、36歳(シーズン1当時)の三つ子が主人公である現在と、三つ子の両親が主人公である過去とを自由自在に行き来します。そして1話の中で、現在と過去をつなぐ共通のテーマが示されます。過去の若き両親の言動と、現在の三つ子の言動とが類比されたり対比されたりするのです。脚本は実に巧妙です。

三つ子であることを巧みに利用し、一つの出来事を三様の視点で解き明かすという手法もあります。幼い日の思い出は、各人各様に刻まれ、人格形成に影響します。若き両親の子育ての苦闘にも共感できます。

三つ子の一人は養子です。一人だけアフリカ系だから自明のことです。彼の実父、父親の弟、父親の親友かつ母親の再婚相手、三つ子の配偶者たちや子どもたちなどなど、脇役も多彩です。そしてこれらの人々が広い意味で「一つの家族」を形成します。米国がヨーロッパ系住民だけで構成されていないように。

シーズンごとに少しずつ「ピアソン家の謎」が解明される喜びもさることながら、欠けの多い(内輪もめも多い)三つ子たちの50歳ぐらいまでの成長を楽しめます。その一方で、米国の諸戦争がもたらした負の遺産、Black Lives Matter、多様な生き方への寛容など、社会的メッセージにも唸らされます。家族/教育/市井の民/歴史とは何かといった思い巡らし、さらに現在と過去をつなぐ聖書や、多様な人から成る教会とは何かといった思い巡らしもできる名作です。JK