2023/03/08今週の一言

【ルツ記2章】

23 そして彼女は、大麦の収穫および小麦の収穫の終わりまで、拾うためにボアズの若者たち〔女性形〕の中に密着しました。そして彼女は彼女の義母と共に住みました。

 23節の末尾の一文は判断を必要とします。底本とは異なる意味の本文が伝わっているからです。これを「異読」と呼びます。

旧約聖書の翻訳に用いられている写本(印刷以前に手で書き写された本文)は「レニングラード写本」と呼ばれるものです。紀元後1008年に作成されました。レニングラード写本は上に掲げたように「そして彼女〔ルツ〕は彼女の義母〔ナオミ〕と共に住みました」としています。しかしそれ以外のヘブライ語写本のいくつかは、「そして彼女〔ルツ〕は彼女の義母〔ナオミ〕のもとに戻りました」としています。ヘブライ語の子音文字が一文字異なるだけで、また母音記号が異なるだけで「のもとに戻りました」という翻訳になりうるのです。

母音記号発明の前、紀元後5世紀にまで遡りうるラテン語訳も、異読の立場を採っています。二つの本文はかなり古くに分岐し、今に至るまで併存しています。どちらの本文が「原文」だったのか判然としません。

異読の立場の場合、ルツは繁忙期である収穫期にはベツレヘムの市街地に戻らず、城壁の外にある畑にずっと住み込んでいたということになります。ルツが女性労働者たちの中に密着したという意味は、昼夜分かたず寝食も共にしたということです。その間ナオミはルツが運んだ一エファの麦で命をつないだということなのでしょう。ルツには城外の職場を中心にしたルツの世界があり、ナオミにはベツレヘム市街の旧知の交わりを中心にしたナオミの世界がある。彼女たち二人は運命共同体です。それと同時に各人の人生が固有のものとして尊重されるべきです。JK