9/23今週の一言

9月23日の「聖書のいづみ」は休会でした。

最悪のものの中から最良のものが生まれることもあるし、また逆に、最良のものの中から最悪のものが生まれることもあるというような感想を持つ昨今です。

ドイツでは第一次世界大戦の敗戦をきっかけにヴァイマル憲法という当時最も民主的と評価された憲法が生まれました(1919年)。斬新だったのは、社会権が憲法上明記されたことです。社会権とは、たとえば最低限の生活を国家に保障させる権利のことです(日本国憲法25条など)。

このヴァイマル憲法のもと、ナチス・ドイツが生まれたことは歴史の皮肉です。ヒトラーは「全権委任法」という法律をつくり、政府がヴァイマル憲法違反の政策を行えるようにしました。それに基づいて「合法的」に、憲法にある社会権規定を無視して、ユダヤ人を虐殺したのでした。最良のものから最悪のものが生まれることがあるのです。

敗戦後のドイツは「たたかう民主主義」を採ります。ナチス・ドイツの蛮行を反省し、あらゆるかたちのナチス擁護を非合法とします。ナチスを少しでも支持する表現には「表現の自由」を適用しないし、ナチスの戦争犯罪に時効を設けません。だから日本で横行するヘイトスピーチはドイツではありえません。最悪の経験から良いものが生まれた例です。

大日本帝国の崩壊という破局によって日本国憲法が生まれました。この憲法も「戦争の放棄」という人類の理想を掲げた、当時最も民主的な憲法と評価されました。今でもその輝きは衰えていません。

自由民主党・公明党の連立与党と、次世代の党・日本を元気にする会・新党改革の三党の賛成によって、9月19日未明に参議院本会議にて「安全保障関連法案」が採決され、可決・成立しました(9月17日の参議院特別委員会での採決が、手続き上無効か否か争いはありますが)。この法制の問題の一つは、「外国で戦争する権利の放棄(交戦権の否定)」を定めた憲法の縛りを、時の政府の判断で解くことができることにあります。この意味で、上述「全権委任法」に似ています。

このような最悪のものの中から、正にそこへの反論を込めて、街角で政治的主張を上げる多くの人々が生まれました。党派の動員ではなく個人の意思で路上に出ていることに感銘を受けます。間接民主制(選挙で代表を選ぶ)は次善の策でしかありません。理想は主権者全員が一箇所に集まって、直接話し合って決めることです。政治分野に参与する当事者意識を持つ個人が増えたことは、希望の芽です。JK