八月は祈り会がお休みなので随想風に書きます。
わが家には2008年4月13日以来犬がいます。米国留学時代の恩師コトレル=リック=カーソン教授(Cottrell Rick Carson黒人・男性・新約聖書学者)にちなんで彼の名をつけ、彼の愛称である「リック」と呼び習わしています。
板橋区の動物病院で、犬名の欄に上記のフルネームを記載したところ、「今日は三頭お連れですか」と尋ねられたことがあります。日本で飼うには長すぎる名前なのでしょうね。ついでに、その問いに「これで一頭の名前です」と答えたところ、受付から「城倉コトレル=リック=カーソンちゃ~ん」と呼び掛けられ微苦笑を禁じ得ませんでした。動物病院では飼い主ではなく犬の名前が呼ばれ、しかも自動的に苗字が付けられてしまうのですね。ここにまで家制度が及んでいるとは、はてさて。初めて犬を飼った身としては、小さな驚きでした。
リックはもともと猟犬として飼われました。しかし、飼い主が猟をできなくなってからは、その飼い主から閉じ込められるという虐待を受けていました。そういった境遇下、ひょんなことからわが家に転がり込んできたのです。血統書はあったそうですが入手できませんでした。出生に関して謎だらけです。
年齢は当時の算定で4-7歳、現在は9-12歳と推測されます。さらに犬種が問題です。アイリッシュ・セッターという触れ込みでした。しかし彼のような巻き毛で、黒い鼻で、眼の大きいセッターはいないのです。よく見るとセッターよりも鼻先が短いようですし、胸回りも太いようにも思えます。まあそれでもセッターと何かが混ざったのかと思っていました。同じように虐待されていた四頭の犬の内、リックだけ最後まで引き取り手がいなかったのは、多分セッターという触れ込みの割に見た目が異なっていたからなのでしょう。
世田谷に来て動物病院を変えました。新主治医は「セッターではない。ジャーマン・ロングヘアード・ポインターだ」と主張し、そのように世田谷区役所に登録してしまいました。「え、イギリス人じゃなくドイツ人だったの」。飼い主の動揺をよそに本人(本犬)は自己同一性の危機にも陥らず普段通りの毎日です。人種の違いなんてその程度のことなのでしょうね。なんだか「醜いあひるの子」の犬版のようなお話で、突然希少価値が上がって戸惑っています。(JK)