知憲のススメ1 「前文」その一

憲法の条文を少しずつ解きほぐして紹介します。4年後には18歳以上の人が憲法改正のための国民投票をすることができます。そんなわけで14歳ぐらいの人に分かる内容で、国民投票の判断材料になるようなものを、提供したいと思います。憲法のすべての条文について気長に連載します。第一回目は、憲法の「前文」の最初の文です。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。 

長い一文です。主語は「日本国民は」、述語は「確定する」です。

しかも旧仮名づかいが混じっています。わたしのワープロミスではなく、原文が小さい「っ」ではないのです。「ないやうに」と言われましてもね。

読みにくさに目をつぶって内容を説明しましょう。ここには三大原則と呼ばれるものが盛り込まれています。

①憲法の中で「自由」という言葉に出くわしたら、「人権」という意味と同じだと思ってください。すべての人はその人らしく自由に生きる権利を持っているということです。憲法は「人権の砦」と言われます。個人の自由を確保するための道具なのです。三大原則の一つ目は、「基本的人権の尊重」です。

②憲法は政府を縛る道具です。戦争を起こすのは政府なので、二度と政府に戦争を起こさせないぞという決意を示しています。戦争は個人の自由を奪いますものね。原則の二つ目は、「平和主義」です。このために「平和憲法」というあだ名がつけられています。

③憲法を定めることができるのは国民だけです。「主権」を持っているからです。今の憲法に改正される前までは(1868年から1947年まで)、天皇が主権を持っていました。主権というのは、すべてを決める権限のことです。原則の三つ目は、「国民主権」です。これは「天皇主権」の反対と考えると分かりやすいものです。すべてのことを一人の人が決められる仕組みではないということです。

ただし、すべての人が集まって国のあらゆることを考えて決めると面倒です。少数の代表者に代わりに仕事をしてもらった方が便利です。一億もいたら実際場所が足りません。そんなわけで国会議員を選挙で選ぶのです。

憲法は国や政府を信用していません。主権を持つ一人一人が世界の人々と仲良くすることによって三大原則が実現します。そのためならば、国会議員や政府を代表者として認めてあげるという「上から目線」が、とても大切です。

前文の最初は長い一文ですが、全文に関わる定規みたいなものとして考えてください。