今週の一言 2013年8月8日

教会暦という教会独自のカレンダーがあります。クリスマスやイースターなどはその代表例です。日本の教会独自の教会暦と言える記念日は、8月15日と2月11日でしょう。前者はアジア・太平洋戦争に敗れた記念日、そして後者は紀元節の復古に反対して「信教の自由を守る日」と教会が名付けた日です。

 カレンダーには教育効果があります。毎年定期的に重要なことがらについて思い出すことができるからです。日本の教会が、常に国外への侵略戦争と国内の思想統制という人権侵害を振り返ることができるのは恵みです。外への戦争と内での人権侵害は、全体主義的軍事国家の車の両輪です。教会もまた戦争に協力しました。この苦い罪責告白に基づいて教会では二度と死に至る道を歩まず、いのちの道を歩こうという決意が、半年ごとに繰り返されます。

 『日本国憲法』は平和・人権の普遍的価値を理想として掲げています。自由を欲する主権者が自由の基礎法・憲法の制定権者です。だから同時に憲法は理想の実施を主権者が国家権力に要求する最高法規です。国家権力を縛ることによって、侵略戦争・人権侵害を食い止めることができるからです。憲法が国家を縛る法であるということ(これを立憲主義と言います)を知らないと、「憲法をいつの間にか変えても良い」とうそぶく政治家にさえ一票を投じてしまうでしょう。

否、自民党の党是は結党の時から改憲なのですから、わたしたちは「いつでも変えてよいですよ。勝手に解釈してね」という白紙委任状を58年間出し続けているとも言えます。教育の力はすごいものです。長期間かけてわたしたちは「憲法や政治を論ずる人・自民党に白紙委任しない人は偏った変な人」と思い込まされ、経済にのみ関心を持つ生活保守主義者に飼いならされ、「現実」(放送局のスポンサーであり自民党と結びついている大企業に都合よく報じられている現実にすぎませんが)と憲法が反している時に単純に「憲法を変える必要あり」と考えるようになりました。

 現在の改憲潮流を止めることは至難の業です。いつでも国民投票ができる環境になったからです。が、不可能なことではありません。逆に巻き戻せば良いのです。長期間の教育・共育で主権者を育て、立憲主義を広め、人権の普遍的価値を普及させるのです。人権保障の延長としての絶対非戦・非暴力の文化を創ること、そして人権を保障するための統治機構を共に考えれば良いのです。そのために『日本国憲法』と日本の教会暦を大いに用いましょう。制定権者はわたしたちです。