2020/09/16今週の一言

いろいろな「民主党」があるものだと改めて思うことがあります。自由民主党、立憲民主党、社会民主党、国民民主党など、他にもあるかもしれません。おそらく「民主主義」や「民主政治体制」については、これらの四つの党は大切なものであると認識しているのだと思います。蛇足ながら、上記四つの党の党員ではないので全く勝手な放談だと思ってください。

民主の前に付く二文字に、それぞれの党の力点の違いも掲げられていると推測します。立憲民主党の場合は、立憲主義を重視しているのでしょう。それは憲法によって国家権力を縛るという考え方です。社会民主党は、「大きな政府」を基礎にした高福祉国家を強調していると推測します。社会民主主義という言葉がすでにあるからです。国民民主党は、おそらく国民主権という憲法上の原理を大切にしているのでしょう。

では自由民主党が重んじていると思われる自由主義Liberalismとは何なのでしょうか。これがつかみにくい。自民党という融通無碍な組織と似て、自由主義という言葉も用いられる文脈次第で定義がさまざまになされます。

「人間というものは生まれながらに自由なのだ」という思想を自由主義と呼びます。自由主義は内心の自由・思想信条の自由・信仰の自由を謳う多元主義の基礎です。反国家主義、いわゆる「国家からの自由」という人権の核です。明治憲法下の思想統制に対する反論が、自由主義と言えます。

自民党は、靖国国営化法案提出、首相ほか閣僚や国会議員による靖国神社公式参拝運動、天皇家の祭儀への公金支出などのように、政教分離原則を踏み越えようとする動きの中心に今もいます。政教分離は権力から思想信条の自由を守るための原則ですから、自民党が「国家からの自由」を本気で追求しようとしているとは思えません。事実自民党改憲草案2012年版は国家主義を強めています。

むしろ自民党は経済学上の自由主義を重視しているのでしょう。自由経済は「小さな政府」を基礎にした「自助」(自己責任論)を前に押し立てます。2000年代の小泉政権以降の自民党の旗印は「新自由主義」です。今度の総裁もこの流れにいます。それにしてもかつてはそのような主張は後ろに引っ込めていたのですが。

政治学上の自由主義は専門性を持つ少数エリートの統治を意味します。いつも似たような人々が支配しているという意味では、自民党の統治様式は自由主義と言えなくもありません。ただし自由主義は反権威主義でもあるはずなので、派閥の領袖の権威が生きているという意味では自由の名が泣く看板倒れです。

聖書において権威という言葉が自由という意味も持っていることをどのように解するのかが課題です。JK