7月22日に通常国会が閉会しました。国会議員の仕事は法律案の作成であり、国会の役割は「より良い法律の制定」にあります。この観点から、長く永田町の慣例となっている法律の作り方を、批判的に検証します。
立法過程は「障害物競走」のようなものです。大まかに三つの局面があります。陸上トラックで言えば、①スタートから第一コーナーを出るまで、②バックストレートから最終コーナーを出るまで、③最後の直線からゴールまでにたとえられます。①は官僚制、②は自由民主党(と公明党)、③は国会における審議です。
①法律の原案は官僚が作成します。主に原案は族議員と利益団体と官僚の意向を受けて作成されたものです。この法案は、所轄官庁内部部局で調整され(障害物1)、そのハードルを乗り越えたら、他省庁との間での利害調整に付されます(障害物2)。ここまでで第一コーナーを回り、法案は自由民主党という最大の調整機関での調整を受けます。議員への説明は官僚が行います。
②自民党政務調査会の小委員会での争点別の利害調整(障害物3)、政調の所轄部会での調整(障害物4)、政調の他の部会間の利害調整(障害物5)、政調審議会で党としての法案の定式化(障害物6)、そして総務会での全会一致での党決議(障害物7)、ここまでで最終コーナーに入ります。そしてここまでの過程を「事前審査」と呼びます。なお、総務会で決定された内容には党議拘束が課せられ、原則として委員会での妥協と内容の修正、本会議での「造反」は許されません。
最終コーナーに入り、法案は自民党(と公明党)の国会対策委員会に預けられます(障害物8)。ここで、法案の審議日程と政治ゲームの予測がなされます。その後、議院運営員会で、審議日程をめぐる野党との調整に入ります(障害物9)。
③やっと国会での本格審議、最後の直線です。所轄委員会理事会において、審議日程、時間割などをめぐる野党との調整(障害物10)、委員会における審議(障害物11)、本会議での議決となります(障害物12)。第二院でも繰り返され、法律案は法律となります(障害物13)。〔あるいは審議未了廃案〕
この仕組みの問題は、法律作成を与党と官僚だけが担っていることです。事実上「事前審査」で法律の内容は固められ、残るは本会議までの逆算と、他の法案との天秤かけです。野党には駆け引きしか許されていません。質問や説教で相手に失点を与えるしかできません。与党にとっては時間稼ぎ・強行採決が最も有効です。事前審査を廃止して、国会の委員会で(つまり主権者が見ている前で)、与野党が逐条審議をし、より良い法律を合作する仕組みに改善したいものです。JK