3月5日に、日本バプテスト連盟セクシュアル・ハラスメント防止・相談委員会主催の公開講演会に参加しました。性暴力犯罪について刑法が改正されたこと、その意義について角田由紀子弁護士から、明快で迫力のあるお話を伺いました。
日本の刑法は1907年に大日本帝国憲法下で制定され、実はその基本的な考え方は今もそのまま踏襲されています。この事情は民法も同じです。1947年に日本国憲法に改正されたにもかかわらず、です。72年前の憲法改正は、「天皇主権」から「国民主権」へ、また、「国家が個人よりも上」という考え方から「個人の基本的人権の尊重」への大転換でした。しかし、その憲法上の大転換が、憲法の下にある刑法に反映されていない部分があるというのですから驚きです。
その一つが性暴力に関する規定です。改正前の刑法177条は、下記の条文でした。(強姦)第一七七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
2017年7月13日に施行された改正刑法は次のとおり。(強制性交等)第一七七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
なお付随して、180条の親告罪も削除廃止されました。親告罪というのは、被害者本人が訴えなくては裁判にならないという犯罪の種類です。被害者心情に反する「泣き寝入り」を促進させていました。
改正のポイントは、被害者を女性に限定しないことや、犯罪行為の様態を幅広くしたこと、最低刑を懲役5年に引き上げたことなどです。110年ぶりの改正ということを考え合わせると、非常に大きな一歩です。
改正の根っこには日本国憲法に基づく、考え方の転換があります。旧177条は、法律によって守るべき社会的利益(保護法益)が、「女性の貞操」でした。家制度を守るために刑罰で女性の貞操を保護していたのです。それに対して改正177条は、個人の生命・身体を守るために処罰すべきと保護法益を転換させています。ちなみに「姦淫するなかれ」(第七戒)の保護法益も女性の貞操・家制度です。
課題も残っています。「暴行又は脅迫を用いて」が残ったために、「暴行・脅迫は用いていない、両者の合意があった」との加害者側の詭弁がまかり通るからです。また「13歳」「5年」という数字が妥当なのでしょうか。JK