前回の続き、今回は「二院制」について考えます。
選挙制度は議会のあり方を規定します。だから衆議院と参議院それぞれに期待するものが異なるのならば、二つの選挙制度に色分けをした方が合理的です。現在の日本の衆参両院選挙制度はきわめて似ています。どちらも選挙区選挙と比例代表を並立させ、それぞれ1票ずつ投票します。しかも選挙区選挙部分の方が大きな割合を占めているところまで同じです。
衆議院は政府を決める院です。衆議院の過半数の賛成によって総理大臣が指名されます。衆議院に政党同士の駆け引き・政局・多数派工作があるのは当然です。多数を得た政策を法律にするのが仕事だからです。では衆議院に対する参議院の存在意義はどこにあるのでしょうか。
日本国憲法の案が帝国議会に上程されたとき、その案の中に参議院は存在せず、衆議院のみの一院制議会が想定されていました。審議の中で、二院制を選び取ったという歴史的経緯があります。先人たちは即断即決よりも熟議熟考を選んだのでしょう。この熟議熟考の現代的意義が問われています。
日本の参議院は世界的にも珍しいほど「強い第二院」です。直接選挙で有権者から選ばれ(民主的正統性の強さ)、法案を否決に追い込めるほどです(権限の強さ)。そして参議院にも衆議院と同じ数だけの常設委員会がおかれ、衆議院と同じ法案審議がなされています。カーボンコピーと揶揄されるほどに、参議院も政党化・政局化しています。法案の生殺与奪を握っているのが参院自民党の権力の源です。
「第二院は第一院と同じ意思決定をするのなら無駄である。また、異なる意思決定をするなら有害である」とフランスの政治家シエイエスは述べました。日本の二院制の現状に照らせば的を射た批判です。だから参議院の意義については、衆議院ですくいきれない民意を反映させることや、衆議院とは異なる仕方の権力分立を行うことに求めるべきでしょう。
たとえば議員候補者を抽選で選んだ後に選挙する方法の採用。これにより世襲・男性・健常者という偏りが改善されます。たとえば議員個人の良心が問われる分野の法律づくり(人権、生命倫理、原子力、教育等)に特化すること。これにより普遍的課題の政局化が避けられます。たとえば議員数名の賛成でも国政調査権を存分にふるえるようにすること。これにより行政監視機能が強化されます。議院内閣制は第一院で、立法・行政の二つの国家権力が一体化します。第二院で健全な牽制と均衡を保つのです。「良識の府」「再考の府」の再構築が必要です。JK