前回の続き、今回は「被選挙権年齢」について考えます。
イエスがエルサレム神殿で律法の専門家と対等に渡り合ったとき、その年齢は12歳でした。現在のユダヤ教徒たちも「宗教的成人式」は13歳です。バル・ミツバまたはバト・ミツバという儀式を経て一人前とみなされたユダヤ人は、律法の朗読当番に加えられます。律法(古代においては法律そのもの)を読むことと、律法を解釈し改訂していくことは表裏の関係です。12歳でも、それらはできます。
日本の被選挙権年齢(立候補できる年齢)は世界的にも高めです。世界194カ国中、下院議員の被選挙権年齢が21歳以下の国は54カ国27.8%程度です。これをOECD加盟34カ国にしぼると27カ国、実に79.4%にのぼります。スウェーデン、ノルウェーなど北欧諸国は一院制であっても18歳を採ります。
日本の被選挙権年齢は、衆議院議員や地方議会議員選挙においては25歳、参議院や都道府県知事選挙においては30歳です。選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられたことは記憶に新しいことと思います。それに伴い成年年齢も20歳から18歳なりました。しかし被選挙権年齢については据え置きのままでした。
被選挙権年齢と選挙権年齢の差を広げてしまったことは不合理です。おそらく、両者が密接に関係するということに無頓着であったのでしょう。憲法学者の辻村みよ子は「被選挙権年齢と選挙権年齢は表裏の関係をなす」と喝破します。投票をする権利と立候補をする権利とは、同時に発生すると考える方が自然。つまり両者を同じ年齢とする方が理に適っているということです。この論に立つならば、衆参両院の被選挙権年齢間の5年という差にも合理的な理由はなくなります。
前述のスウェーデンとノルウェーは被選挙権年齢と選挙権年齢を共に18歳としている国です。この二つの国と、日本との間には顕著な違いがあります。一つは投票率です。両国ともに全年齢層において80%以上が当たり前、それに対して日本は今回の参院選で48.8%です。特に18・19歳は30%代。選挙権年齢を引き下げただけでは、自治を担う若者は増えませんでした。
二つ目の違いは、30歳以下の国会議員の比率です。スウェーデン5.0%、ノルウェー5.6%、日本はわずか0.6%、両国の8分の1から9分の1という少なさです。被選挙権年齢も選挙権年齢と同じ年齢にすることで、政治は自分のことになります。自分たちの世代を代表する人物を国会に送るために、若年層も積極的に立候補し投票するはずです。幼稚園から人権を教え、小学校から政策・政党を教え、中学校から議会・税金・外交を教える「主権者教育」が下支えとなります。JK