2020/09/09今週の一言

2013年4月からヨハネによる福音書の講解説教が始まり2014年12月まで続きました(1年8か月)。そこから旧約聖書の出エジプト記1章から24章までの講解説教が、2016年3月まで続きます(1年3か月)。次に新約聖書に戻ってルカによる福音書の講解説教が始まり、2019年1月に全24章を終えます(2年9か月)。さらに旧約聖書に戻って創世記25章から50章までの「ヤコブ物語」が2020年8月まで続きました(1年8か月)。現在わたしたちは新約聖書の使徒言行録を1章1節から読み進めています。

上記の礼拝説教箇所の選びにおいて意識されていることは、旧約聖書と新約聖書のバランスです。期間で言うと若干新約聖書の方が長くなりますが、ほぼ半々の取り上げ方を交互に行っています。旧約聖書は分量的には全聖書の四分の三を占めていますが、礼拝説教ではほとんど取り上げられません。他教派の、とある教会の百年史編纂の際に、100年間の毎主日礼拝において、通算たったの5%しか旧約説教はなかったというデータが示されたそうです。日本バプテスト連盟においても似たり寄ったりでしょう。

次に意識されていることは「物語重視」、抽象的な教理よりも具体的な出来事を優先する姿勢です。子どもと一緒の礼拝ということも関係します。新約聖書においてはパウロの手紙よりも福音書・使徒言行録を優先して選んでいます。パウロの教える教理(救済論)よりも、イエスや教会の言行に焦点を合わせたいからです(救済そのもの)。旧約聖書においても詩文(預言、詩編、格言等)や法律(律法部分)よりも散文の物語を優先しています。さらに諸物語群の中でも、最初に正典とされた五書(創世記から申命記)から選んでいます。

福音書・使徒言行録には、五書およびその延長にあるヨシュア記・士師記・サムエル記・列王記との重なり合いがあります。〔ちなみに、ヨシュア記から列王記までを含めて「九書」と呼ぶ人もいます。〕神と神の民の歴史という点で、両者は共通しています。神とは誰であるのか。五書は族長と共にいた神・イスラエルを解放した神と答え、福音書はイエス・キリストであると答えます。神は神の民を救う方です。神の民とは誰であるのか。五書は滅びゆく一アラム人から始まったイスラエルであると答え、福音書・使徒言行録はイエスの周りにいた人々から始まった教会であると答えます。旧新約の関係は時間的前後・継承だけではなく、同時的重複・共鳴でもあります。

 神と神の民の紡ぐ歴史が新旧約聖書全巻を貫く主題、太い本流です。聖書に導かれる時、各個教会の歴史も本流に繋がる細い支流として紡がれていきます。JK