クオータ制という言葉があります。英語のquota(「割り当て」の意)に由来します。「四分の一」という意味のquarterクォーターではありません。だから「クォータ」というように「小さいオ」にもなりません。発音通りにカタカナ表記すれば「クオウタ」だからです。
クオータ制は選挙制度に関する術語です。選挙の際に、さまざまな意味の「マイノリティ(力を奪われている人々)」に、議席を割り当てる仕組みを指します。たとえば、国会議員議席のうち女性に50%を割り当てること(ジェンダー・クオータ)や、少数民族に5%割り当てる(民族クオータ)などの制度です。
議会は社会の縮図とならなければなりません。そうでなくては「私たちの代表」たるべき「代議士」ではないでしょう。通常行っている選挙によっては、いつまでも人口分布通りに女性代議士が40-50%まで存在しないのならば、その議会は「正当に選挙によつて選ばれた国会における代表者」(憲法前文)たちの集まりと言えるでしょうか。女性差別は世界中に広く存在するので、多くの国がジェンダー・クオータ制を採用しています。そして性差別克服の効果をあげています。
2011年、志村バプテスト教会は、一種のクオータ制を盛り込む連盟規約改正提案を連盟定期総会に上程しました。それは、規約の付則に「連盟内すべての意思決定機関における性差を均衡させるように努める」という趣旨を明定してほしい、という提案でした。結果は圧倒的多数の保留・反対により否決というものでした。「自然に性差が解消されるのを待つべき」という意見が大勢だったのです。
それから10年が経ちました。現在、連盟の機構改革の目玉の一つは選挙制度の改正です。そこには珍しい形のクオータ制が組み込まれています。「男性や教役者の数を制限する」という仕組みです。この10年来「男性教役者」の理事選出率は60-70%で推移し続けています。男性支配は自然に解消される気配がありません。
教役者にのみ理事が偏ることは連盟政策(特に中長期財務計画)に弊害をもたらしています。牧師は会計に明るい人が多くないし、職業的に数字で事柄を分析しないからです。また抽象的な理念にこだわりやすいので、急な判断を要する「法人の経営」について、あまり向いていないからです。驚いたことにこのクオータ制提案に、目立った反対が聞こえません。世の中は進んでいるようです。JK