箴言はことわざを集めた格言集です。いわば処世術の類です。箴言の中には、現代にも当てはまる、にやりと笑えることわざや、ちくりと刺さる警句があります。
箴言というヘブライ語単語(マシャル)は、「似ている」という意味から派生したものです。「AとBは似ている」という素朴な発見が数多く登場します。イエスの譬え話の源流に、箴言の発想法があります。
箴言は楽観的な二元論に立っています。善人には幸せが訪れ、悪人には不幸がもたらされるはずだというのです。あるいは処世術を身に着ければ人は幸福な人生を歩むはずだというのです。
箴言は「知恵文学」の代表選手です。知恵文学とは、神が創造した世界の法則についての知恵を著した書です。知恵文学の中には、「特別な民イスラエルをヤハウェという固有名をもった神がエジプトから救い出した」という信仰告白はありません。そうではなく、全世界を創造し保っておられる神への信頼が基盤にあります。民族主義的偏向がなく、普遍的な主張が知恵文学の特徴です。
箴言の中で擬人化されて登場する「知恵」(ホクマー)は、神によって初めに創造された被造物であり、神と共に居る存在です(8章22-31節)。ヨハネによる福音書1章1-2節に示される、初めに神と共にあったという「言」(ロゴス)との関連が古代以来議論されています。確かにイエスは知恵の教師でもあります。
ところで「知恵」と「霊」(ルーアハ)は女性名詞です。この事実は現代においてフェミニスト神学者によって強調される点です。三位一体の神は、男性による・男性のための・男性の神ではなく、自ら多様性を内包した神です。
日本バプテスト連盟の諸資料を読む機会が増えました。言葉の氾濫に食傷気味です。連盟という交わりのためには、むしろ知恵と霊とが必要なのかもしれません。JK