2023/07/26今週の一言

【4章】

18 そしてこれらがペレツの歴史。ペレツはヘツロンをもうけました。 19 そしてヘツロンはラムをもうけました。そしてラムはアミナダブをもうけました。 20 そしてアミナダブはナフションをもうけました。そしてナフションはサルマをもうけました。 21 そしてサルモンはボアズをもうけました。そしてボアズはオベドをもうけました。 22 そしてオベドはエッサイをもうけました。そしてエッサイはダビデをもうけました。

「歴史」〔トーレドート〕という言葉は、「由来」(創世記2章4節)、「系図」(同5章1節、10章1節ほか)などとも訳すことができます。歴代誌上が系図によって歴史を略述しているように、ユダヤの民にとって系図は歴史そのものです。繰り返される「もうけました」〔ホーリード〕は動詞ヤラド(生むの意)の使役語幹。「生ませる」が直訳であり、トーレドート(歴史)と同根の言葉です。言葉使いから明らかなように、この歴史はもっぱら男性中心の視点で描かれています。18-22節には、ナオミやルツという本書の主人公女性たちが登場しません。

原文で「ダビデ」という単語で締めくくるルツ記は重要な事柄を暴露しています。なんとユダヤ民族主義者にとっての英雄ダビデ王の曾祖母が非ユダヤ人であるというのです。この国際主義的な視点がルツ記とヨナ書に共通しています。

マタイによる福音書1章の「イエス・キリストの系図」には、四人の女性が紹介されています。ペレツの母タマル(カナン人。創世記38章)、ラハブ(カナン人娼婦。ヨシュア記2章1節)、ルツ(モアブ人。ルツ記)、バト・シェバ(ヘト人ウリヤの妻。サムエル記下11章3節)です。外国人差別と民族主義、家父長制と家制度、女性差別と性の商品化など通底する課題が、四人の女性たちの紹介を通して読者に突き付けられています。これらは現代にまで残る人類の歴史的宿題です。JK