今回はアロン。ミリアムの弟、モーセの三歳上の兄です。レビ部族アムラムとヨケベド夫妻の二番目の子どもです。アロンは、モーセや同じころに生まれたヘブライ人の男児と異なり、生まれた時にナイル川に投げ込まれていません。彼我の生死を分けたものは何か、アロンは生涯この重い課題を背負っていたのではないでしょうか。アロンは弟をヘブライ人共同体に歓迎します(出4章27節)。
雄弁家であるアロンは(出4章14節)、モーセの預言者・代理人として、ファラオから出エジプトの許可を求める行政交渉を担います(出5-11章)。不誠実な最高権力者にも根気強く説得努力を続けるのです。
シナイ山のふもとでモーセを待っているイスラエルの民は、アロンに詰め寄り、アロンを最高指導者に擁立しようとします。いわゆる「金の子牛事件」です(出32章)。このクーデターはレビ人たちによって鎮圧されますが、なぜかアロンにはお咎めがありません。その直前にアロンとその息子たちが常夜灯をともし続ける祭司職に任じられているからでしょうか(出27-28章)。
アロンの長男ナダブと次男アビフは異なる香をたいたためにヤハウェ神に殺されます(レビ10章)。シナイ契約締結に同席するほど重用されていたのにもかかわらず(出24章1節)。二人の死をアロンは黙って忍耐します。類似の事件「コラ、ダタン、アビラムの反乱」の余波でヤハウェ神が民を疫病で殺した時に、アロンは香をたき、神を宥めて一部を救います(民16-17章)。神を宥めて民を救うことに犠牲祭儀や香をたくこと、祭司の職務の本質があります。アロンは犠牲祭儀を中心とする礼拝の創始者です。そして「アロンの祝福」(民6章24-26節)と呼ばれる定型句は、もう一つの祭司の職務を伝えています。会衆への祝福です。
アロンはモーセとエルアザルに看取られホル山で死にます(民20章)。生命の意義を思い続け毎日毎週の奉仕を続ける雄弁家、アロンもまた偉大です。JK