今回はシモン・ペトロの義母です。名前は知られていません。
ペトロが同信の女性と結婚していたことは広く知られています(一コリ9章5節)。マルコ福音書によれば、ペトロ夫妻の家はカファルナウムにありました(マルコ1章21・29節)。そこに妻の母親も同居していたのです(同30節)。
ペトロとアンデレの兄弟の出身地はベトサイダです。漁師だった兄弟はベトサイダからカファルナウムに何らかの理由で引っ越します。そこでカファルナウム在住の女性と出会ったペトロが結婚し、彼女の実家に同居をすることになったのでしょう。ついでに独身のアンデレも一緒に。義母の夫が登場しないことから、彼女はやもめだったと思われます。ナオミとルツの物語とやや似ています。
カファルナウムの会堂から追い出されたイエス、ペトロ、アンデレ、ヤコブ、ヨハネは、このペトロの義母の家に転がり込みます。ペトロは、義母の寛容な気性をよく知っていたので、その好意に甘えるつもりだったのです。アンデレは、ナザレのイエスを母娘に紹介したかったとも思います。
ところが義母は熱を出して寝ていました。病人のいる家に客になることはできません。病状を聴いたイエスは、義母の手を取って起こし、病気を癒しました。「そして彼女は彼らに仕え続けた」(同31節)。「仕え続けた」(ディアコネオー)はイエスの弟子として奉仕することを指す動詞。その動詞の未完了過去時制が用いられ、過去の継続した行為が表されています。彼女が弟子としての行動を続けたのは、この時から召される時まで継続していたのではないでしょうか。
ペトロの義母の家を拠点に、イエスはガリラヤ地方を巡回し、福音を宣教しつつ、治癒と悪霊祓い、食卓運動を行います。彼女はイエスによって2番目に癒された人物であり、5番目に召命を受けた弟子です。イエスの復活をおそらくガリラヤで見た(ヨハネ21章)彼女の自宅は、教会となっていったことでしょう。JK