2024/04/24今週の一言

今回は「水の預言者」エリシャ、「火の預言者」エリヤの唯一の弟子です。

 エリシャは裕福な農民でした。普段の農作業中にエリヤから預言者としての召しを受けます(王上19章19-21節)。そしてエリヤの昇天後に本格的なエリシャの預言者としての活動が始まります。

エリヤの「外套」と「霊」(王下2章13・15節)を受け継ぐエリシャは、師と同じく奇跡行者です。彼は、水をきれいにし、野生の熊を召喚し、空の器を油で満たし、死者を蘇らせ、ハンセン病を癒し、遺失物を見つけます(2-6章)。

その一方で、独自の預言者集団を形成することにおいて、また、国家権力との近さにおいて、エリシャは師エリヤと異なる道を歩みます。エリシャには多くの「預言者の仲間たち(直訳:預言者たちの息子たち)」がいます(2章15節、4章1・38節、6章1節、9章1節)。エリシャは、言わば「預言者学校」の校長のような存在です。彼は組織的に弟子である職業預言者たちを養成していたのです。イザヤ書等の「預言書」がいかに保管・編纂・拡充されたかを推測させる組織です。

「預言者学校」は「政策シンクタンク」でもありました。エリシャは北イスラエル王国宮廷のブレーンでもありました。師エリヤは預言者として国家権力を批判しましたが、エリシャは国家権力に助言をし、モアブ王国・エドム王国・南ユダ王国・アラム王国等周辺諸国との外交・軍事に関わります(3・5-8章)。

この国家権力との親密さは、イエフ王朝に対してさらに拍車がかかります。エリシャが王朝の創始者イエフのクーデターに参与しているからです(9章)。エリシャが死の床に着いた時、イエフの孫にあたるヨアシュ王が見舞いに来ます(13章14節以下)。彼はエリシャを「わが父よ」と呼んでいます。エリシャが「国父」として敬われ、代々の王に指南をしていたことを示す逸話です。なおヨアシュ王の言葉は、エリシャ自身が師エリヤに向けて発しています(王下2章12節)。JK