2024/04/30今週の一言

今回はツィポラというミディアン人女性です。ツィポラの父親はレウエルまたはエトロという名前を持っています。彼は祭司かつ羊飼い。娘ツィポラも羊飼いです。彼女が羊の群れに水を飲ませようとしたときのこと、競合する羊飼いの男性たちに水を奪われるという出来事が起こりました。その時彼女を助けた亡命者がモーセです。ツィポラはモーセと結婚し、ゲルショムという名前の息子を生みました。そして父の家で、夫と息子と共に羊飼いとして暮らします。

ある日夫が帰宅した後、「エジプトにいる親族のもとへ帰らせてほしい。まだ元気でいるかどうか見届けたいから」と父に願います。ツィポラは、夫の真意を知っていました。彼はヘブライ人奴隷をエジプトから脱出させるための指導者に任じられたのでした。彼女と息子ゲルショムは彼に同行します。

ミディアンからエジプトまでの道中、ヤハウェの神はモーセを殺そうとします。夫か息子の割礼がなされていないことが問題だとツィポラは見抜きました。彼女は、とっさに息子の包皮を切り、それをモーセの「足」につけます。「足」は陰茎の言い換えかもしれません。彼女は息子と夫の割礼を同時に済ませ、モーセの命を救いました。ツィポラは機知によってモーセを救った女性の一人です。

モーセらのファラオに対する行政交渉の間でしょうか、ツィポラとゲルショムはミディアンにいったん帰りました。その後、出エジプトを果たしたイスラエルの民に、ツィポラはゲルショムとエリエゼルという二人の息子を連れて合流します。彼女の存在はミディアン人についての深い考察を促します。

民数記12章1節に登場する、モーセと結婚したクシュ人女性をツィポラと同視する解釈がユダヤ教にもキリスト教にもあります。二人の女性は別人と捉える方が自然です。モーセはツィポラを悲しませる行為を行ったのでしょう。聖書本文の上では、彼女は沈黙をし続けています。JK