2024/05/15今週の一言

今回はエゼキエル、紀元前5-6世紀の男性預言者です。「旧約聖書のカルバン(宗教改革者・神学者)」とも称されます。彼の著したエゼキエル書は、捕囚の地バビロンで著作したことが唯一明記されている一級の歴史資料です。

 エゼキエルは身分の高い祭司でした。年上の同時代人・老預言者エレミヤとも面識があったと思います。若き愛国者エゼキエルは、「新バビロニア帝国が祖国を滅ぼす」というエレミヤの警告に大いに反発していたことでしょう。エレミヤの預言通り、「第一次バビロン捕囚」(前598年)が起こった際に、悔い改めを胸にエゼキエルは敵国の首都バビロンに強制連行されます(王下24章)。

バビロンでエゼキエルは預言者となる召命を受けます(前593年。1章)。奇妙な姿の神を見る点で、エゼキエルの召命記事はイザヤ書6章と類似します。そしてイザヤやエレミヤと同じく、彼にも「象徴行為(珍妙な行動を通したメッセージ)」が課せられます(2-5章)。彼は最終破局を回避するための悔い改めを求めます。

配偶者の死(24章)の直前に「第二次バビロン捕囚」(前587年)が起こり、エルサレム神殿が徹底的に破壊され南ユダ王国ダビデ王朝が滅ぼされます(王下25章)。彼女の死は王国滅亡の象徴です。この時点からエゼキエルの預言内容は、最終破局に対する警告から破局後の復活の希望へと転換します(34・37章等)。

エゼキエルは捕囚の地で人々の悩みを聞く牧会者でした。「ダビデ王朝もエルサレム神殿も祭司制度も約束の地もなくなったわれわれが、どうやって生きるべきか」(33章10節)という悩みに対して、エゼキエルは答え励ましたのだと推測します。「安息日に会堂に集まる、聖書朗読礼拝を中心にした信仰共同体(新しいイスラエル)を創ろう。エレミヤは正しかった。エレミヤ書の思想をもとに、約束の地に帰還する希望を聖書にまとめよう。」申命記の末尾が約束の地に入る直前で終わっていることは、バビロン捕囚下の民の状況を映しています。JK