2024/06/26今週の一言

今回は、十二年間出血が止まらないという病気に苦しんでいた女性です。名前は知られていませんが、共観福音書すべてに記録されている人物です(マルコ5章25-34節とその並行個所)。レビ記15章によると、体内からの分泌物(膿、精、血等)は宗教的な意味の「けがれ」の対象となります。それだから女性は月経期間中「けがれ」ているとされ、その延長で彼女のような病気を患う人は罹患中ずっと「けがれ」ていると法定されていました(同25-27節)。

 彼女はカファルナウムに住んでいたと推測できます(マルコ5章21節)。病気の苦しみだけではなく、町の人々のもつ「合法的な偏見と差別」による苦しみも重くのしかかっていました。さらに悪いことに、医者が彼女を搾取して、彼女の財産はすべて奪われてしまったのです(同26節)。

 イエスはカファルナウムを拠点にして「神の国運動」を始めました。その活動の最初は、悪霊祓いと多くの病人を癒す行為でした(1章21節以下)。その中でもツァラアトという、「けがれ」と法定された皮膚病の患者に触れたこと、そしてその結果治癒を行ったという噂が(1章40節以下)、特に彼女の心の琴線に触れます。「もしかすると自分の病気も直してもらえるかもしれない」。

 イエスが向こう岸に渡ったこと(5章1節)を彼女は残念に思い、自分の町に戻ってくる日を一日千秋の思いで待ち焦がれていました。そしてその日が来た時に彼女は意を決し、イエスに触れようと街に出ます。人波をかきわけて後ろからイエスの服に触れたのです。するとその瞬間に彼女の病気は癒されました。

 彼女を探すイエスと弟子たち、震えながら進み出る女性、「けがれ」を避けるために彼女から離れる人々、イエスの周りに残る弟子たち(そこにレビもいたか)。イエスの言葉に彼女の全存在が癒されます。「あなたの信があなたを救った」(34節)。彼女もまたカファルナウム教会の中心人物となったと思います。JK