今回はカインという男性、アダムとエバ夫妻の長男です。
母親エバに命名されたカイン(「獲得」の意)は、父親アダムと同じ仕事に就きます。土を耕し大地からの実りを獲得する農夫です(創世記3章23節、同4章2節)。「耕す」(アバド)という単語は、「労働する」「(奴隷として)仕える」「礼拝する」をも意味します(2章15節も)。
ある日カインは収穫物の一部をヤハウェの神に捧げました。ヤハウェはカインの捧げ物を凝視せず、彼の弟アベルの捧げ物を凝視しました。ヤハウェが態度を違えた理由は謎です。また「凝視しなかった」ということが「見なかった」ことなのか、「見るには見たが注意深くは見なかった」ということなのか、曖昧です。神が信徒の捧げ物を受け取らないということは一見想定しがたいからです。
カインは神の態度の違いに激怒します。そしてヤハウェに対する怒りをアベルに向け弟を殺します。以下は殺害後の神とカインの対話。「あなたの兄弟アベルはどこに(3章9節参照)」「私は知らなかった。私は兄弟を守る者か」「あなたがしたことは何か(3章13節参照)。あなたの兄弟の血の声が地から私に向かって叫び続けている。」
義人の叫びを聞く正義の神はカインを裁きます。判決は死刑ではなく共同体からの追放です(3章23節参照)。「私の罪/罰(アヴォン)は担うことより大きい」(4章13節)と嘆くカインに応えて、ヤハウェは誰もカインを殺すことができないように彼の額に印をつけました。神は裁きながらも、恵みを与え、生きるように励まします(3章21節参照)。2章から4章をまとめて読むと、カインがアダムとエバの、ある意味で正当な継承者であることが分かります。
カインは町を建て、その子孫は芸術を創め、金属製道具を製作し、文明を繫栄させます。競合し獲得し隣人を貪りがちな私たちはカインの末裔です。JK