今回はロトという男性、モアブ人とアンモン人の始祖です。ロトの父親はハランといいます。ロトの母親についての情報はありません。ロトは父ハランの死後、祖父テラに連れられてバビロニア地方のウルという町から、シリア地方のハラン(人名ハランとは綴り違いの地名)という町に移住します。
伯父アブラムと彼の妻サライが祖父テラの家を棄てて、神の示す地へと向かう時にロトと彼の妻と娘たちは同伴します(創世記12章5節)。娘しかいないロトにとっても家父長制(「父の家」同12章1節)は息苦しかったのかもしれません。
ロト家族もまたアブラム・サライ夫妻に匹敵する財産を有していました。そして彼・彼女らはアブラムの「家」の相続には興味がなく、別々に暮らします(同13章)。目先が利くロトは自分の一族の繁栄を願い、肥沃な地にあり栄えている町ソドムに居を移します。彼の複数の娘たちはソドム人と結婚し定住します。
アブラムはロト家族が戦争に巻き込まれた時に救出してくれたり(同14章)、神がソドムの町を滅ぼそうとする時にロト家族のために祈ってくれたりしています(同18章)。伯父と甥の関係は悪くなさそうです。ロトは二人の見知らぬ旅人を手厚くもてなします(同19章)。この行為はアブラハムに似ています(同18章)。そしてアブラハムが息子を神のために殺そうとしたように(同22章)、ロトも二人の娘たちを旅人のために犠牲にしようとしました(同19章)。二人は同志です。
突然にロトは、結婚した娘たち・婿たち・孫たちと、愛妻(ロトには複数の妻がいないようです)を失います。彼には二人の娘だけが残されます。三人は人目を避けて洞穴の中に暮らします。ロトは酒浸りの生活になっていたのでしょうか。娘たちは父親を騙し、酒に酔って分別を失った父親によって男の子をそれぞれ出産します。姉の方の子がモアブ、妹の方の子がベン・アミです。この二人の男の子が後のモアブ人とアンモン人の始祖となります。父親/祖父ゆずりの才覚です。JK