今回はレアというアラム人女性です。彼女の父親はラバンといいます。ラバンの父親はベトエル、ベトエルの母親はミルカ・父親はナホル、このナホルはアブラハムの弟です(創世記22章20ー24節)。またベトエルの娘リベカは、アブラハムの息子イサクと結婚しています(同24章)。
レアは生まれつき目が「弱い」人物でした(同29章17節)。この「弱い」という言葉には「柔らかい」という意味もあるので、目が不自由であったのか、それとも優しい目をしていたのか、解釈が分かれるところです。ここでは前者を採ります。それゆえに彼女は「結婚差別」を受けていたと解します。
父ラバンの妹リベカの息子を名乗る男性が、ある日レアの家に転がり込んできました(同29章1ー14節)。ヤコブです。レアにとっては従姉弟にあたります。ヤコブはレアの妹ラケルを愛し、父ラバンに結婚の許可を求めます。父ラバンはヤコブを騙し、結婚しづらいレアをラケルと共にヤコブの妻とさせます。家父長制と一夫多妻制のもと、レアの意思は反映されない「男たちのみの会合」によって、彼女の婚姻が決定されます(同14ー30節)。
夫ヤコブはレアを疎んじラケルを偏愛します。神はこのレアをみとめます(同31-35節)。そして彼女に多くの子どもを授けます。家父長制のもと子どもを多く産むことは神の祝福の結果と考えられていました。一夫多妻制のもと女性たちは無用の競合を強いられていました。その時代にあって、特有の仕方で神はレアの恥を雪ぎ、彼女の名誉を回復させたのです。
娘ディナの性暴力被害に対するレアの言動は記されていません(同34章)。しかし共感と知恵と悲憤で娘を包容したことでしょう。レアがいつ死んだのかは不明ですが、夫ヤコブはレアを祖父母アブラハムとサラ、両親イサクとリベカと同じ墓に葬ったと言います(同49章31節)。神は、サラ・リベカ・レアの神です。JK