2024/11/27今週の一言

今回は預言者イザヤの妻です。紀元前8世紀半ばから後半にかけて南ユダ王国に生きた預言者です(イザヤ書8章3節)。旧約聖書の中に明記されている女性の預言者は四人だけ。ミリアム、デボラ、フルダ、そしてイザヤの妻です。

 イザヤの妻に何人子どもが居たのかは不明です。少なくとも彼女は、「シェアル・ヤシュブ」(7章3節)という息子と、「マヘル・シャラル・ハシュ・バズ」(8章1・3節)という息子を生み、その命名に関わっています。この二つの名前の意味は、前者が「残りの者は立ち帰る」であり、後者が「分捕りは早く、略奪は速やかに」です。どちらも自分の子どもに付けるにはためらわれる名前です。

 イザヤ夫妻の名づけ行為は、自分たちが発する預言(神の言葉の伝言)の内容と関わり、その名前に中心的使信が含まれています。「象徴行為」や「行為の預言」と呼ばれるものです。おそらくこの行動様式を、イザヤ夫妻は預言者ホセア・ゴメル夫妻から学んでいます(ホセア書1-2章)。ホセアは北王国で活躍した預言者でイザヤ夫妻よりも10歳ほど先輩の同時代人です。

預言者イザヤの言葉の中には夫婦で紡いだものも多くあると思います。ダビデ王朝という大樹は一度切り倒され、そこから新しい芽が出るという預言(6章12-13節)。一度アッシリアに滅ぼされても残りの者はおり、必ず神に立ち帰るという預言がシェアル・ヤシュブという名づけによってなされています。また南王国を軍事的に脅かすアラム王国も北王国も速やかにアッシリアに滅ぼされるという預言が、マヘル・シャラル・ハシュ・バズという名づけに込められています(8章4節)。これらの言葉を夫婦は熟議の末に生み出しています。

有名なインマヌエル預言との関係は興味深いところです。7章14節の「若い女性」はイザヤの妻なのでしょうか。旧約聖書学的にはヒゼキヤ王の母アビではないかと推測され、キリスト教信仰においてはイエスの母マリアです。JK