今回は預言者ミカ。「誰がヤハウェに似ているか」という意味をもつ名前です。紀元前8世紀の南王国ユダ部族の男性預言者、イザヤ夫妻より少し年下の同時代人です。預言者アモスとホセア(妻ゴメル)から見れば一世代下にあたります。ミカの預言の内容から、預言者たちは互いに知己であったことすら推測できます。ミカ書に、農民の立場からの社会正義の追求(イザヤ・アモスに類似)、偶像崇拝批判と王国滅亡の警告(ホセアに類似)が存在しているからです。
ミカはエルサレムから南西35kmにあるモレシェト(・ガト)という町の出身です。アモスの出身地テコアにも遠くないので、彼はアモスとアモス書を知っていたと思います。前721年北王国がアッシリア帝国に滅ぼされ、ホセア書が北王国からもたらされました。ホセア夫妻も亡命してきたのかもしれません。「北王国で起こったことは南王国でも起こる」とミカは確信し首都エルサレムに移住し、預言活動を始めます。ミカは史上初めて南王国の滅亡を予告した預言者です(3章12節。エレミヤ26章18節)。首都ですでに預言活動を開始し発信していたイザヤ夫妻(前734年以降)と、ミカは意気投合します。
ミカは「エルサレム攻囲戦」(前701年)という戦争を経験しています。その際にアッシリア帝国軍が、ミカの故郷の町を含め南ユダ王国のすべての町を蹂躙し併呑しました。山城である首都を攻め上る大軍を前に、ミカとイザヤ夫妻は有名な「剣を鋤に、槍を鎌に打ち直せ」と預言します(4章1-3節)。この歴史的な文脈に有名なメシア預言があります(5章1-5節)。「彼こそ平和」
戦争後宗主国アッシリアと自国マナセ王による思想弾圧をミカは体験します。ミカの希求する平和は誰もが脅かされず、おのおの自分の神を礼拝できる社会です(4章4-5節)。もしもわたしたちが公正を実践し、信実を愛し、自分の神と共に低く歩くのならば、そのような一人ひとりが平和を創り出します(6章8節)。JK