2025/03/26今週の一言

今回はイザヤという人物。紀元前8世紀の南ユダ王国の男性預言者です。前8世紀の記述預言者は、アモス・ホセア・ミカと、イザヤ夫妻だけです。

イザヤはウジヤ王の死(前742年)をきっかけに預言者としての召命を受けました(6章)。彼はエルサレム神殿の祭司であり、王の側近でもあったようです。この点で在野の経営者アモス、モレシェト出身のミカとは異なる経歴の預言者です。しかし同時代人として、アモスやミカと同じく貧富の格差や社会の不公正を批判し、自国に向かって神の裁きを警告しています(1-5章)。

イザヤの大きな特色は、戦争と平和を生涯の主題として預言活動をしていることです。そして時の政権に、預言という体裁で外交安全保障政策について直截に物申しているのです。

前734年シリア・エフライム戦争が起こり、アラム王国・北イスラエル王国連合軍が南ユダ王国に攻め入りました。南王国アハズ王は、北東の大国アッシリア帝国を頼り、アッシリア軍によってアラム・北王国連合軍を蹴散らしてもらおうと考えました。イザヤ夫妻は、行動と言葉により「神のみに頼れ」と訴えます(7-10章)。アッシリアによる北王国の滅亡が、結局南ユダ王国への侵略の呼び水にもなることを見据えていたからです。

前721年サマリア攻囲戦の末、アッシリアは北王国を滅ぼします。多くの難民を姉妹国である南王国は引き受けます。ホセア・ゴメル夫妻も居たのでしょうか。さらにアッシリアは南王国領土を蹂躙しエルサレムを包囲します(前701年)。その際にミカも故郷を焼かれエルサレムに逃げてきます。

シオンの山を包囲するアッシリアの大軍を前に、イザヤとミカは合作で全世界の平和を預言します(イザ2章//ミカ4章)。狼と羊が共存できる、武力によらない平和がイザヤの希求する理想の社会でした(11章)。 JK