今回はイスカリオテのユダという男性弟子です。「イスカリオテ」は「ケリヨトの男性(イーシュ・ケリヨート)」という意味でしょうから、ユダはユダヤ地方のケリヨトという町の出身者と推測できます。北部ガリラヤ地方出身者ばかりの弟子集団の中で、ユダは少数者です。この事実は、ユダがすべての「十二人の男性弟子リスト」において十二人目に登載されていることと関係します。彼は遠路はるばるガリラヤ地方にまで出向いて弟子になったので、時間的に最後の人になったのでしょう。ユダはイエスの生き方に共鳴しています(ヨハネ福音書12章5節)。
イエスを中心とする老若男女から成る弟子集団の中で、ユダの信頼は厚かったようです。彼は放浪の旅をするイエス一行の会計係でした。イエスの活動は「食卓運動」とも称されます。定住の支援者たちも含む仲間たちの「台所事情」に、ユダは精通しています。そして毎回の食卓の予算を集まる人々の規模に応じて組み、帳尻を合わせながら旅を続けていくのです。ユダは縁の下の力持ちです。
なぜ彼はイエスを銀貨30枚で権力者たちに引き渡したのでしょうか。明智光秀のような心境か、ジョン・レノンを撃った人のような心境か、よく分かりませんが深い失望の結果の心変わりであろうとは推測できます。
イエスはユダの裏切り行為を黙認し続け、最後の晩餐にも同席を認め、ゲツセマネの園においてもユダを「友」と呼んでいます。彼の死がイエスの十字架刑死とほぼ同時の自死であったか(マタイ福音書27章3-10節)、イエスの復活後相当日数が立った後の事故死であったかは未決のままです(使徒言行録1章15-19節)。最古の復活証言であるコリントの信徒への手紙一15章5節は、復活者が「ケファに現れ、その後十二人に現れた」と伝えています。卑劣な一番弟子ペトロを赦した救い主は、裏切者ユダをも含む男性弟子十二人を赦したと思います。JK