2025/06/18今週の一言

今回はシモンという男性弟子です。

シモンはマルコ福音書14章3節に名前が紹介されています。マルコによれば、彼の住まいはベタニヤ村にあり、彼はハンセン病に罹っていました。有名なナルドの香油を注いだ女性弟子の物語は、シモンの自宅で繰り広げられたのでした(3-9節)。シモン自身はどのような弟子だったのでしょうか。

イエスの創始した食卓運動を支える「弟子」には大別して二種類いたと言われます。イエスと共に放浪の旅をする弟子たちと、旅する弟子たちを補給支援する定住者たちです。マグダラのマリアや男性十二弟子のようなガリラヤから付き従った弟子たちは前者にあたり、カファルナウムのペトロの妻や義母、エリコの徴税人ザアカイ、ベタニヤ村のマルタ・マリア・ラザロの姉弟らは後者です。食卓運動を継承したキリスト教会においてもこの大別は残っていたと思われます。

同じベタニヤ村に、ハンセン病のシモンの家と、マルタたちの家と二つの拠点があったのでしょうか。ナルドの香油物語は、ヨハネ福音書においては香油を注ぎかけた女性弟子はマルタの妹マリアです(ヨハネ12章)。では、ハンセン病者シモンは、病死し蘇らされたラザロと同一人物なのでしょうか。

ルカ7章において香油物語は、とある町の律法学者シモンの自宅でなされています。名前の共通性と、香油物語の場面を設定した家の所有者という共通性から、律法学者シモンこそがハンセン病者シモンは同一人物なのだと推測します。

ハンセン病者を律法に基づいて社会から排除する側にいたシモンが、自分自身ハンセン病に罹患したと仮定します。彼は独り悩み自宅に引きこもります。病気の苦しみだけではなく、自己の生き方についての悩みもあります。イエスはそのシモンの家を訪れ、彼に触れ、弟子とし、彼に給仕させ、彼の家を定宿として用いていたのではないでしょうか。「家の教会」の原型です。JK