2025/07/16今週の一言

今回は「主の兄弟ヤコブ」、ナザレのイエスの弟です。ヤコブの両親はヨセフとマリア、すぐ上の兄がイエス、下には弟や妹たちがいました。父ヨセフは早逝したと言われます。寡婦となった母マリアは苦労して子どもたちを育てます。ヤコブも兄と共に少年の頃から家業の大工仕事をしていたと思います。

兄はユダ地方の荒野に居る浸礼者ヨハネのところに行き、ほどなく帰って来てすぐに独自の宗教活動を始め、家を出てしまいました(後28年ごろ)。ヤコブは母に同調しつつ、兄の自由過ぎる行動を批判し、ナザレにある家を守ります。

しばらくして母が兄の弟子となりました。ヤコブは母に従い自分も兄の弟子となり放浪の旅をします。エルサレムで兄が逮捕された時にヤコブは恐怖し身を隠しました。一方母は兄の処刑を見届け、三日目に彼の墓が空だったことを証言します。信じきれない弟のために、兄は目の前に現れました(Ⅰコリ15:7)。この時ヤコブは真にイエスが神の子キリストであることを信じることができたのだと思います。彼は初代エルサレム教会の創立に参与します(後30年)。

ユダヤ人のみの「十二弟子(≒十二使徒)」に率いられるエルサレム教会は、ステファノらギリシャ語を使うキリスト者仲間を見捨て、彼らに対するユダヤ教正統派からの迫害を黙認します(後32年)。この民族主義が、イエスの血縁であるヤコブをエルサレム教会の最高指導者に押し上げた背景です(使徒12:17、ガラ1:19。後45年)。「ユダヤ教正統派に迫害されない形で教会を維持する」という方針のもと、彼はおそらく主日礼拝に並んで神殿参拝もしています(使徒21:17-26)。

その一方でヤコブはアンティオキア教会の非ユダヤ人伝道を条件付きで支持します(使徒15章13-21節、ガラ2章9節。後48年)。バランス感覚が彼の長所です。ユダヤ教正統から「義人(律法を守る者)」と称されたヤコブではありましたが、結局兄と同様に大祭司アンナスの手によって処刑されます(後62年)。JK