2025/10/29今週の一言

今回はワシュティという女性、エステル記1章に登場する人物です。

ワシュティはペルシャ帝国の王クセルクセス1世(原文「アハシュエロシュ」口語訳参照。治世は前486-465年)の王妃でした。名前の由来は、ペルシャ語「最良」「最善」か、アッカド語「美しい女性」のいずれかです。確かに「彼女は見かけの良い女性」(直訳)と記されています(11節)。昔も今も女性は「見られる性」「男性によって見かけが消費される性」です。

クセルクセス王の治世第3年(前484年)、傲慢で気まぐれな王は支配する全地域の男性知事たちを招き、7日にわたる盛大な酒宴を設けます。王妃ワシュティは、男性王に招かれない女性たちのみの酒宴を主宰していました(9節)。

酒宴の最終日、ワシュティのもとに王の側近である宦官らが来ます。「王妃の冠を付けて、王の酒宴に来い。その美しさを知事たちに見せたいから」とのことです。ワシュティは、王の命令を拒否します。拒否の理由は聖書に明示されていませんが、用語面から断固たる拒否、公的抵抗であることが示唆されます。

ユダヤ教徒たちの伝統的解釈の中に、「王がワシュティに『衣を身に着けずに来い』と命じた」というものがあります。「それだからワシュティは羞恥と尊厳を守るために拒んだのだ」と解釈は続きます。この解釈は事柄を正確に射抜いています。ワシュティが断固として拒否したかったことは「女性が男性から常に見られ、男性目線で評価されている」という事柄です。「わたしのからだはわたしのもの、誰からの評価もいらない。夫の見栄のために見世物にされるのはまっぴら」と、彼女は軽やかに、しかし大いなる決意を秘めて、夫である王を一蹴します。

王は激怒しながらも、何をすべきか分かりません。結局男性大臣たちの進言により、王は王妃の地位を奪います。彼らは「全ての夫が彼の家を支配し続けるように」(22節。直訳)との新法も制定します。何と露骨な女性憎悪。JK