2025/11/05今週の一言

今回はメルキゼデク(「わたしの王は義」の意)という男性。創世記14章、詩編110編、ヘブライ人への手紙7章に、その名前が登場しています。

メルキゼデクはサレム(原音「シャレム」)という都市国家の王でした。サレムはエルサレム(原音「イェルシャライム」)を指すと推測されています。ダビデがエルサレムと命名するまでは、その場所はエブスと呼ばれ、エブス人が支配していました。メルキゼデクは約束の地の先住民エブス人の王です。

さらに彼は「いと高き神の祭司」でもありました(創世記14章18節)。政教一致した古代社会において、王は「政(まつりごと)」も「祭(まつり)」も司ります。「いと高き神」はエブス人の信奉していた「エル・エリヨーン」という神です。伝統的に「いと高き」と呼び慣わしています。「エル・シャッダイ」を「全能の神」と呼び慣わすことと似た事情です。カナンの地には「エル・…」という名の神が地域ごとに多くあったと考えられます(創世記16章13節他)。

エブス人の王、エル・エリヨーンの祭司であるメルキゼデクは、アブラムが戦災に遭った甥ロト家族を救出したという出来事を聞きます。五つの都市国家連合と四つの都市国家連合との戦争です。都市国家ソドムの敗戦と共に捕虜となっていたロト家族を、アブラムは武装した奴隷たち318人によって助け出したのでした。都市国家サレムは直接その戦争には関わっていません。しかしメルキゼデクは戦争の惨状や、ロト家族を襲った不幸に心痛めていたのでしょう。彼はアブラムにお祝いを述べるためにパンと葡萄酒を土産に携えて駆け付けました。エブス人でありながらウル人のアブラムを、エル・エリヨーンの祭司でありながらヤハウェを信じるアブラムを、メルキゼデクは祝します。

正義と平和について考えさせられます。メルキゼデクのような第三者が増えることによって、正義と平和の口づけする社会が実現するのかもしれません。