2025/12/03今週の一言

今回はヤイロという会堂管理者の娘です。十二歳であったこと以外には詳しく何も知られていない女性です。

彼女は病気に罹りました。何の病気かは分かりませんが、全く食欲が出ずに衰弱していきました。古代のこと、病気の原因が何であるか、そしてその治療に何が必要なのかはあまり明らかではありません。病を患えば安静にするほかなく、結局のところ本人の自然治癒力が生死を分けるのです。体力の無い子どもたちは病気によって死ぬ可能性の高い、か弱い存在でした。

古代人の十二歳は、ほぼ成人です。ユダヤ人社会においては、男性であれば会堂での聖書朗読当番に組み入れられるのが満十三歳。十三歳を迎えた直後の安息日に行う、当該男性にとって生涯最初の朗読当番(「バル・ミツヴァ」と呼ばれる。「律法の息子」の意)は、わたしたちで言う「成人式」に類比されます。

病のために彼女は寝たきりになり、横になったまま意識を失いました。ぼんやりと、「自分はここで死ぬのだ」と感じていたことでしょう。

次に目を覚ました時に、彼女は寝床に座っていました。そして彼女の目の前に満面笑顔のイエス。彼が彼女の手を取って座らせたようです。両親の声も聞こえます。泣いているのか笑っているのか判然としない喚き声です。二人は代わる代わる彼女を抱きしめ、イエスに謝辞を述べ続けています。さらに部屋を見回すと、父の管理する会堂で見かけた成人男性が数人いるようにも見えます。

彼女は自分から病が出て行ったことを感じ取りました。頭がすかっとして、気分も晴れやかだからです。スキップでも踏みたい気分というのでしょうか、寝床を飛び出し、部屋の中を跳ね回り始めます。初めは恐る恐る、次第にスピードを上げ、最後には軽やかに。イエスと三人の弟子たちも、彼女に倣ってその後ろを楽しく踊り回ります。踊りの輪の只中に神の国があります。JK