今回はルカ福音書1章に登場するザカリア(ヘブル語名「ゼカルヤ」ヤハウェは思い出すの意)という男性。レビ部族、祭司の家系で「アビヤ組」に属していました(5節。歴代誌上24章10節)。エルサレム近郊の住民と推測します。
とある日、ザカリアがいつものように神殿の聖所で香を焚いていたところ、天使ガブリエルが目の前に現れました。ザカリアは恐怖に駆られます。祭司の職務をしていてこのようなことは一度も無かったからです。職業は人格を作ります。いつもの所作でつつがなく祭儀を執り行うことを最善と考える祭司ザカリアは、とっさの出来事への即応が苦手です。
混乱する彼に、天使は大略次のような言葉を告げました。「あなたの妻が妊娠し、預言者エリヤに類する人物を生む。その子どもをヨハネ(ヘブル語名「ヨハナン」)と名づけよ」。ザカリアはこの預言を疑います。なぜなら彼も妻も年をとっていたからです。先祖アブラハムを想起させる彼の率直な反応です。
この不信によってザカリアは「息子の誕生まで話せなくなる」という、重い罰を受けます。これは神殿で祭儀を執り行うという職を失うということを意味します。障がい者差別のゆえですし(レビ記21章17節以下)、発声を伴う業務もあったからです。ただし、祭司の身分は保障され、生活の資は与えられたようです。
呻くのみの彼は自宅に帰り引きこもります。ほどなく妻の妊娠を知り、沈黙の中でガブリエルの言葉について思い巡らします。数か月後、天使の予告通り男の子が生まれました。近隣縁者たちは、深い喜びに一人浸るザカリアを呼び出し、息子の命名について質します。家制度を重んじ妻の言葉(実は天使の言葉)を軽んじている野次馬たちに、「彼の名前はヨハネ」と、ザカリアは筆談で伝えました。その瞬間、彼は話すことができるようになりました。こうなると賛美が止まりません。不信の言葉は沈黙を経て賛美の言葉に変えられます。JK
