2025/12/31今週の一言

年末に行われた東京バプテスト神学校の冬期公開講座に出席し多くの恵みを得たことを報告いたします。講師は日本旧約学会の会長である小友聡さん、東京神学大学で25年間教鞭をとられた方です。旧約聖書の「コヘレトの言葉」研究の専門家であり、NHKの「心の時代」という番組に出演されたこともあります。

コヘレト書は、不信/懐疑主義/ニヒリズムの書として扱われることが多く、それだからこそ日本の非キリスト教徒知識人たちに喜ばれています。「空の空。一切は空〔ヘベル〕」(1章2節)という言葉が、色即是空・空即是色を想起させるからです。小友さんは、その異端児コヘレトを旧約思想の正統に位置付けます。なぜならコヘレトが徹底的にこの世で生きることを肯定しているからです。

小友さんは、ヘベルという単語の訳語として「空」ではなく、「束の間」を提唱します。虚無ではなく、時間的な短さの表現ととるのです。この訳語の変更により、コヘレトは通説とは別の輝きを放ちます。「人生は短い。苦しみの時も短い。夜明けは近い。だから日常生活を大切にして生きよ」という強烈な逆光です。

小友さんはコヘレトを黙示思想に対する反論と理解します。黙示思想とは終末信仰です。世界が神の裁きによって終わること、その時が決定されていること、その時義人が復活すること、これらの希望によって迫害があっても生きるという思想です。旧約聖書で言えばダニエル書、新約聖書で言えばヨハネ黙示録がその代表。復活信仰の土壌となった黙示思想は、ややもすると、オウム真理教や旧統一協会等の「破壊的カルト」に悪用されかねないという弱点を持ちます。あの世をこの世よりも上位に置くという構造が問題なのです。

苦難をも一過性の「束の間」と捉えて、それでも生きるしなやかさを身につけたいと思わされました。JK