5月18日の「聖書のいづみ」では出エジプト記26章15-37節を学びました。幕屋の壁板と横木の仕様、聖所と至聖所を区分する垂れ幕の仕様、入り口の幕の仕様についての規定です。
幕屋全体のわかりやすい立面図や細かい部分の仕様については、岩波訳旧約聖書の巻末に収められています。
幕屋は高さ4.5m×横4.5m×縦13.5mの直方体です。そして内部で二つに仕切られています。奥にはちょうど4.5mの立方体の部屋ができます。それを「至聖所」(「聖の中の聖」の意)と呼びます。この至聖所に、神が臨在すると観念された「贖いの座」で蓋をされた「掟の箱」が置かれます。「燭台」と「机」のセットは聖所に置かれているので、至聖所は真っ暗、掟の箱以外に何も無いという状態です。聖所と至聖所を分ける垂れ幕は、最も神聖な領域と、一段格下の神聖な領域を分けるという意味合いを持っています。
至聖所は、ソロモンの建てた神殿(第一神殿)にも設けられました(列王記上6章15-22節)。それは9mの立方体です。その中に「主の契約の箱(掟の箱)」が置かれます(同8章6節)。聖所と至聖所を区分するのは、「オリーブ材の扉」でした(同6章31節)。
バビロン捕囚(紀元前587年)の際に崩壊した第一神殿に代わり、第二神殿が建てられましたが(紀元前515年)、至聖所の寸法等詳しいことはよく分かりません。掟の箱は存在していないでしょう。ヘロデ大王が始めた大規模増改築においても(紀元前20年頃工事開始)、至聖所がどのような仕様であったかは不明です。幕屋や第一神殿という前例に倣い、おそらく9mの立方体であったと推測されます。
イエスの十字架刑死の際に、神殿の垂れ幕が上から下まで真っ二つに裂けたという記事があります(マルコ福音書15章38節)。当時の神殿の聖所・至聖所の区分のためには、幕屋の伝統を引く垂れ幕が用いられていたことが推測されます。
キリスト信徒にとって、イエスの十字架は「神殿の崩壊/無化」を意味します。至聖所に神が居られるのではなく、信者一人ひとりの中に神が宿られることを、わたしたちは信じています。また、それは「誰がより神に近い上等な人間か」という比較する人生の終わりでもあります。キリスト者となっても、教会の中で序列をつくる発想が残る場合があります。十字架は信者をこそ問うものです。終わりのない低みを目指す旅に全ての人が招かれています。JK