わたしたちが米国留学した1999年から2002年というのは、米国南部バプテスト連盟Southern Baptist Convention(SBC)の右傾化が確立した頃でした。おそらくレーガン大統領の時代から、新自由主義と右傾化が米国社会に広がっていたことと軌を一にしているのでしょう。教派神学校から女性の教授を追い出すこと・加盟教会間では女性教役者を認めないことが徐々になされ、2000年に改訂された「南部バプテスト連盟信仰宣言」の中に「女性教役者を認めない」という内容が明記されたのでした。日本バプテスト連盟は、南部バプテスト連盟に対して、この件につき公に抗議をしています。
わたしたちが学んだマーサー大学マカフィー神学校は、女性教授を任用しており、女性の神学生が約半数いました。南部連盟内グループの協力バプテスト友好団Cooperative Baptist Fellowship(CBF)の建てた穏健中道派の神学校だからです。マカフィー神学校は、SBCの神学校を追われた、比較的リベラルな教授たちによって構成されていました。
SBCとCBFの大きな論争点の一つは、同性愛についての態度にもありました。これもまた米国社会全体を二分する話題です。SBCは同性愛を断固として認めず、CBFは同性愛者を排除しないという態度でした。
ある年配の牧会学の教授は、「自分たちの時代は、黒人の公民権運動が教会と神学の課題だった。君たちの時代は、同性愛が教会と神学の課題となるだろう」と言いました。米国で起こっていることは、少し遅れて日本でも現実化します。聖書を正典として奉じながら、どのように批判的に解釈し、教会において建設的に解き明かしていくか、それによってどのような社会貢献ができるかが問われています。女性や性的少数者に対する性差別は、聖書にも明記されているので、深い知性と理性に基づく読み解きが必要とされます。
別の年配のキリスト教史の教授の言葉も忘れられません。「現在のSBCは、バプテスト本来の上下関係の無い『連盟convention』であることを止めている。理事会が加盟教会よりも上位に位置して、強権をふるっているからだ。自分にとって連盟conventionとは、加盟教会の代表が集まる最高意思決定機関・『総会convention』の三泊四日のことを意味する」。
日本バプテスト連盟をどのようにイメージすれば良いのでしょう。互いに排除しないで、尊重しながら適切な距離を保って、横に手をつなぐ交わり。その中心にキリストが座っているような任意加盟団体がconventionというものです。JK