12/28今週の一言

10月から12月にかけて放映されたTBS系テレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ――we married as a job(通称「逃げ恥」)』は楽しい番組でした。軽妙に「時代」というものの断面を切り取って見せてくれたことに感銘を覚えました。

大学院を修了しても、特に女性の場合は、中々職に就けないという状況から物語は開始します。就職氷河期に生きる若者の生きづらさへの共感が見て取れます。その窮地から脱出する術が、「住み込みで給与の発生する契約結婚」という「職業」を得ることでした。「夫」が雇用主となり「妻」が労働者となり、毎月給与を支払うのです。その金額は、月給194,000円から共通して使用する生活費を折半して差し引いたものです。ここには、とかく経済的にも地位的にも評価されない「専業主婦」と呼ばれる人々を、「家事労働者」として捉え直す視点があります。

新垣結衣と星野源が演じる主人公二人は、夫婦であることを演じているだけの契約関係から恋人関係に発展し、やがて真に夫婦となっていきます。一般的な夫婦にしばしば見受けられる「妻の持つ夫に対する愛情を利用した、夫による妻に対する搾取(体の良いタダ働き)」を批判しつつ、「夫婦は雇用主・労働者の関係ではない」と二人は気づきます。むしろ、「家庭の共同経営者(CEO)」という関係こそが、夫婦関係の本質ではないかと中間的に総括し、共働きを始めるのです。

すると、家事の分担を巡る葛藤、つまり男女の賃金格差からくる「少ない稼ぎの人が多くの家事を担うべき」という考えが、夫の意識を支配していることがあぶり出されてきます。この葛藤のあるままに、各人が柔軟な構えで対等の夫婦関係を常に再構築するようにと促して、ドラマは完結しました。

上記の主人公たちの物語である「本流」以外にも、「支流」として脇役陣も光っていました。夫の浮気から離縁し、一人で子どもを育てることとなった女性。恋している同性に告白することをためらう同性愛の男性。17歳下の男性からの求愛に戸惑う女性。これらの脇役たちは、恋愛や結婚の多様なあり方を温かく肯定し、それらに関連した社会の課題を上手に浮き彫りにしていました。女性の貧困問題・異性愛絶対主義・出産奨励主義などがやんわりと批判されています。

このようなジェンダー視点を満載させ、かつ多様な生き方を是認するドラマが高視聴率を獲得してお茶の間で楽しまれたという現象を歓迎したいと思います。時代は変わったのです。テーマソングの一節、「夫婦を超えてゆけ、二人を超えてゆけ、一人を超えてゆけ」が耳から離れません。自由な発想で誰もが生きやすい社会を再構築し続けなくてはと思います。それはイエスの示した道でもあります。JK