2017年は日本国憲法施行70周年という記念すべき年でした。そして、本当に憲法の条文を読み直す機会の多い年となりました。
森友学園・加計学園の問題は、憲法15条2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」という言葉を想起させました。行政官が値引きの台本を作ったり、上司に忖度をしたり、勝手に資料を廃棄・隠蔽したりするなどは論外です。この問題について厳しい指摘をし、行政権力を牽制した「会計検査院」は、憲法90条が定める憲法機関です。
米軍基地の存置は、日米安全保障条約と日米地位協定にのみ基づいています。根拠となる法律が無いまま沖縄に負担を押し付けています。なぜなら、沖縄へのしわ寄せを法制化するためには「その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ」ならないからです(憲法95条)。憲法軽視があります。
自由民主党は以下の「改憲4項目」を提示しました。①9条に3項目を付け加え「自衛隊」を明記する(憲法機関とする)。②緊急事態条項を付け加える。③参議院議員に都道府県代表の役割を持たせる(43条参照)。④高等教育も無償化する(26条2項参照)。
①と②については、東アジアの安全保障環境が変化していることが理由とされています。「この理由自体が事実に基づくのかどうか」、「仮に事実だとしても憲法改正が適切な解決になるのかどうか」という吟味が必要です。自衛隊が憲法機関となることや、緊急事態時に首相の権限が強くなることは、軍事的脅威の予防や対応に役立つのでしょうか。「権力を縛るための道具として憲法が存在する」という「立憲主義」の立場からも慎重になるべきです。
政府与党は6月に通常国会を閉会させ、野党から53条に基づく「臨時国会開催要求」がなされても、一向にその召集を決定しませんでした。そして9月にようやく開いた臨時国会冒頭で、衆議院を解散させ総選挙を実施しました。与党にとって都合の良いタイミングでの解散でした。この一連の行為は憲法の趣旨を没却させています。解散は首相の専権事項とする「憲法7条説」から、内閣不信任決議の際にのみ解散を認めるとする「憲法69条説」への解釈の変更が必要でしょう。
11月・12月と両院で憲法審査会が開催されました。2018年には、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」(96条1項)により改憲発議が国会でなされる可能性は高まっています。そうなれば憲政史上初の「国民投票」の実施となります。その時に備えて自分自身の憲法理解を固めていきたいものです。 JK