礼拝でヤコブと彼の妻たちや子どもたちの物語(創世記25-50章)を読んだ時に、彼ら彼女たちの物語が「十二部族」の歴史と重なり合っていることを確認しました。ヤコブの「愛妻」ラケルの長男ヨセフの子孫が最大部族エフライムとなること(北イスラエル王国の別名。なおヨシュア、デボラ、サムエルらもエフライム部族)、ラケルの次男ベニヤミンの子孫からイスラエル最初の王サウルが登場すること(なお預言者エレミヤもベニヤミン部族)。ヤコブの「正妻」レアの次男レビの子孫が大祭司の家系となりミリアム・アロン・モーセを輩出すること、レアの四男ユダと妻タマルの子孫がダビデ王を輩出するユダ部族(南ユダ王国の別名、また「ユダヤ人」という呼称の由来。なおヨシュアと共に約束の地に入ったカレブもユダ部族)となることなどなど、旧約聖書は一代歴史絵巻物です。
このような重なり合いは新約聖書にも見られるものです。換言すれば、旧新約聖書には両者を貫く太い棒のようなものがあります。
周知のごとくイエスはユダ部族出身のダビデの子孫です。キリスト=メシア=油注がれ任命された救助者は、「ダビデの子」であるということは旧約聖書からの要請です。クリスマス物語でベツレヘムというダビデの出生地が強調されている所以です。使徒言行録の主人公と言われる使徒パウロはベニヤミン部族の出身です。彼は二つの名前を持っていてギリシャ語名はパウロ、ヘブライ語名はサウルです。部族の英雄サウル王に因んだ名前であることは明らかです。
旧約のユダからダビデ王を経由して新約のキリスト・イエスへという糸があります。それとある意味並行する形で、旧約のベニヤミンからサウル王を経由して新約の使徒パウロへという糸があります。この二つの糸が縒り合されて太い棒のような綱が形成されています。十二部族の歩み、南北両王朝や両王国の歴史、ガリラヤで始まったイエスの神の国運動、そしてパウロたちの非ユダヤ人と共なる教会形成。これらはつながっているのです。
それはレアとラケルという姉妹の歴史です。His-story(男性たちの歴史)ではなく、Her-story(女性たちの歴史)として読むことが、ある意味で根本に立ち戻った素直な読み方です。JK