2021/12/15今週の一言

クリスマスは贈り物の季節です。人々が互いにプレゼントをするという習慣は日本でも定着したのだと思います。

この習慣の由来は、紀元後3-4世紀にミラという町(現在のトルコにある)の司教ニコラオスという人物の逸話にあります。彼は貧しい家の窓(または煙突)に金貨を投げ入れたり、冤罪で殺されかけた三人の死刑囚の命を救ったりした善人でした。このニコラオスが後に列聖され、「聖人(Saint)」となります。聖ニコラオスの英語表記Saint Nicolausが、さらに訛ってSanta Clausとなったわけです。日本語のサンタクロースです。

ニコラオスの善行は、聖書にあるクリスマス物語に因みます。東方(現在のイラクあたり)から来た占星術の学者たちが、貧しい家庭に生まれたイエス・キリストにプレゼントをしたというのです。それは黄金・乳香・没薬だったと言われます。いずれも古代世界における貴重品です。

博士たちの贈り物がなぜこの三つだったのかについて、古代以来「美しい解釈」が施されてきました。黄金については、「貧しいヨセフ・マリア夫妻にとって一番助かるものだった」とか、「この後のエジプトへの逃避行に必要な資金だった」とか。乳香については、「馬小屋の中の強い動物臭を消すためだった」とか。そして、没薬については、「イエス・キリストの十字架の死を先取りするものであった」とか。というのも没薬は、死者に塗るための芳香剤・防腐剤の類の薬で、赤ん坊への贈り物としてはいささか場違いであるからです。

ここまで考えていくと、ニコラオスの善行はクリスマス物語だけに因むとも言い難くなります。ニコラオス自身は匿名の贈り物だけではなく、死刑囚の命を救うということもしているのですから、なおのことです。占星術の学者が一度だけ行った行為ではなく、むしろナザレのイエスの生き方全体に、ニコラオスは従ったのでしょう。人間の居場所ではないところで生まれ、貧しい人と共に生き、病む人を癒し、汚い・臭いと攻撃されている人を庇い、その結果として冤罪を被り十字架で殺された方。イエス・キリストが示した豊かな人生を、少なくとも一年に一度は思い出せるという意味で、クリスマスは意義深い季節です。   JK