【ルツ記2章】
8 そしてボアズはルツに向かって言いました。「貴女は聞かなかったでしょうか、私の娘よ。貴女は他の畑で拾うために行ってはいけません。そしてまたこの(場)から貴女は(決して)渡らないように。むしろここで貴女は私の若者たち〔女性形〕と共に密着すべきです。
9 それらが実っているその畑の中に、貴女の目(を)。そして貴女は彼女たちの後ろを行きました。私は若者たち〔男性形〕に貴女に触れないようにと命じなかったでしょうか。そして貴女は渇きました。そして貴女はその器に向かって行きました。そして貴女はその若者たち〔男性形〕が汲むところから飲みました。
二つの反語表現があります。「~しなかっただろうか」(完了形)という疑問文は相手に質問をしているのではなく、「確実に~した」という話者の確信を修辞的に表現しています。新共同訳聖書は、「よく聞きなさい」(8節)、「命じておこう」(9節)と訳しています。いずれも将来の行為と解しているのです。試みに私訳は完了形の動詞を過去の行為として訳しました。すると、ボアズの畑という職場はルツが就労する前から女性たちにとって、ほんの少しばかりではありますが「より働きやすい職場」であったかもしれないということが伺えます。
古代のこと男女の労働条件の格差は歴然です。男性たちは正規の賃金を支払われ昇格(管理職への昇任)も可能ですが、女性たちには賃金は支払われず落穂拾いばかりだったのでしょう。その中で、すでにルツは女性労働者たちと行動を共にしています。非男性たちの連帯が自然だったからでしょう。そして男性労働者は女性労働者の体に触れさせないということがボアズの畑では徹底していました。その一環として、おそらく女性たちの無償労働であった水汲みを、ボアズの畑では男性たちが担っています。ジェンダーの視点から興味深い事例です。JK