【4章】
5 そしてボアズは言いました。「貴男がナオミの手からその畑を買う日に、モアブ人ルツ、その死者の妻をも私は買うのです、彼の嗣業の上にその死者の名前(を)起こすために。」 6 そしてその贖う者は言いました。「私は私のために贖うことができません。わたしが私の嗣業を滅ぼさないために。貴男、貴男こそが貴男のために私の贖いを贖いなさい。なぜなら私は贖うことができないからです。」
ナオミの土地を「贖う者」である二人が対話を続けます。第一順位の贖う者は4節でナオミの土地の購入意思を示しました。それに対して、第二位順位の贖う者であるボアズは、当該土地が条件付きの物件であることを示します。ナオミの土地を購入・所有する者は、ナオミの義理の娘にあたるモアブ人ルツをも所有する義務を負っているというのです。
ボアズは相手方の持っているモアブ人に対する差別意識を利用したのかもしれません。ルツの子どもたちに自分の財産が分与される可能性を、贖う者は必要以上に否定的に評価をしています。二回繰り返される「贖うことができない」(6節)は、客観的には適合しません。法律で禁止されているわけではないからです。しようと思えば彼にはできる行為です。「モアブ人などを家に入れてたまるものか」との彼の主観が、「自分にできるわけがない」という結論になっています。
「私は買うのです」(5節)は理解困難です。そのため底本に注が施され「貴男は買うのです」と読みなさいという指示が付記されています。ほとんどの翻訳はその指示にしたがっています。ボアズの気持ちと物語の結末を先取りした「文法間違え」として興味深いものです。それにしても「女性を買う」という表現を婚姻の意味として用いることには抵抗がありますが。JK