今回は新約聖書の人物イエスの母マリアです。ギリシャ語でMariamまたはMariaと綴ります。旧約聖書のミリアムの音訳です。
当時の女性と同様にマリアは十代で結婚したようです。夫は大工のヨセフ。イエス出産後、ヨセフとの間に彼女は、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンという息子たちと、名前の知られていない娘たちを生んでいます(マルコ6章3節)。イエスの父がヨセフではないことは故郷ナザレで知られており、そのためにマリアとイエスは差別されていたと思われます。「マリアの息子」は非嫡出子への蔑称です。
マリアは長子イエスの活動に反対をしています。彼女は息子を家に連れ戻そうとします(同3章21・31節)。被差別の故かマリアはナザレ村住民と同じ意見でした(同6章1-6節)。しかしいずれかの時点でイエスの弟子となり、遠くから息子の十字架刑死を見守り、復活の証人の一人となります(同15章40節・16章1節)。ヨハネ福音書によれば、マリアは十字架の下で福音書著者ヨハネの扶養家族とされます(ヨハネ福音書19章25-27節)。
復活の証人でもあったマリアは、当然に初代教会の創立時のメンバーとなります(使徒言行録1章14節)。彼女も教会を支えた「やもめ」の一人です(同6章2節)。初代教会の「柱」(ガラテヤ2章9節)の一人使徒ヨハネは、マリアを自宅に引き取りたかったかもしれません。それがイエスとの約束だったからです。しかしもう一人の「柱」である、実の息子・次男ヤコブ(「主の兄弟ヤコブ」/「小ヤコブ」)がマリアと同居したと思います。ペトロやヨハネを押しのけて、ヤコブがエルサレム教会の最高指導者となったことから推測できます。
こうしてナザレで生まれたマリアは、ベツレヘムでヨセフに助けられてイエスを生み、エルサレムでヤコブに看取られながら死にます。マリアにしかできない波乱万丈の歩みです。JK