2024/03/06今週の一言

 今回はバト・シェバです。彼女の夫はヘト人ウリヤ、ウリヤの死後はダビデ王です。前夫ウリヤはダビデの家臣の将軍でした。ダビデの「三十人の勇士」に数えられるほど忠実かつ有能な軍人です(サム下23章39節)。バト・シェバは夫と共にエルサレムに住みます。

 彼女の人生が大きく変わったのは、夫の留守中ダビデ王が彼女を王宮に呼出し、性的関係を強要し、妊娠させた時からです。彼女の妊娠に慌てたダビデ王は夫ウリヤを謀殺しました。そして王は彼女の意思を問わずに、彼女を自分の妻の一人としました。バト・シェバはダビデ王の子どもを出産させられます。ひどい不正義、力の濫用です。ところが、神はなぜかダビデ王の不正義に対する裁きとして、バト・シェバの生んだ第一子を死なせます(サム下11-12章)。

 この不条理の経験が彼女の転機だったのではないかと思います。人は与えられた条件の下でなければ生きることができません。古代西アジアにおいて「王の母」(太后)は強大な権力を持っていました。王の妻の一人となった彼女は、ダビデ王との間の次男ソロモンに残りの人生を賭けます。彼女はソロモンを王にすることで溜飲を下げようとします。人生の苦い杯を、自分で味付けして美味しい飲み物にするのです。

死を目前にしたダビデ王に、バト・シェバはソロモンへの王位継承を遺言するようにと迫ります。そしてダビデ王は彼女の願い通りにし、継承順を覆してソロモンが王となります(王上1-2章)。ソロモン王の兄・ライバルのアドニヤは即位後ソロモンに殺されますが、バト・シェバに煽られた感があります。JK