今回はフィリポ、男性十二弟子の一人です。共観福音書にフィリポは名前しか紹介されていません。フィリポの人となりはヨハネ福音書と使徒言行録に記されています。彼はガリラヤ湖北辺のベトサイダ出身(ヨハネ1章44節)であり、ギリシャ語が堪能です(11章20-22節)。ヨハネ福音書によればフィリポは同郷の盟友アンデレ、ペトロの兄弟に次ぐ第三番目の弟子です。
フィリポはイエスとの対話が多い弟子です。6章ではイエスから質問をされます。「この飢えた人たちのパンをどこで買うべきか」。するとフィリポは答えます。「二百デナリオンでも賄えない、無理な注文だ」(6章6-7節)。十字架前夜にフィリポはイエスに、「アッバと呼ばれる神を見せよ」と求めます。するとイエスは、「私を見ることがアッバを見ることと同じだということを、信じなさい」と諭します。フィリポとイエスは率直に語り合える関係を築いていました。
共観福音書と使徒言行録においてフィリポは、五番目に紹介される弟子です(使徒1章13節)。十二弟子の一人フィリポと、七人の指導者の一人フィリポ(6章5節)とが同一人物であるならば、フィリポに独特な重要性が与えられます。彼はアラム語話者の十二弟子と、ギリシャ語話者の七人との唯一の結節点です。フィリポだけがアンデレともステファノとも親友なのでした。
エルサレム教会の主流がユダヤ民族主義者になったころ、フィリポはサマリアに福音を宣べ伝え、エチオピア人にバプテスマをし、地中海沿岸地域で巡回伝道をし、カイサリアに教会を建てます(8章)。福音宣教者フィリポの家の教会は、医者ルカが船旅を手配する「パウロ主義教会代表団」を招き入れます(20-21章)。この交流を基盤にして、カイサリアに拘留され裁判を続けていたパウロを、フィリポとその娘たちの導くカイサリア教会員が、ルカと共に支えていたのです。
イエスとイエスの霊は、ギリシャ語堪能なフィリポを大いに用いました。JK