2024/08/21今週の一言

 今回は、ラハブという女性。ヨシュア記2章や6章に登場するエリコの住民です。名前の意味は「広い」です。なお、ヨブ記9章13節他に登場する「ラハブ」という神話上の怪物は、原文の綴りが異なる別単語です。

 ラハブは、イスラエルの民がカナンの地に定住していく際に重要な役割を果たしたカナン人の一人です。聖書によれば彼女はエリコの町に住んでいたとされています。いわゆる「エリコの戦いの物語」です。

 エリコが最古(紀元前8000年)の城壁をもった町だったことや、ヨシュアたちの時代(前1200年ごろ)には城壁も破壊され町も廃墟だったことは、考古学上立証されています。聖書の物語は何らかの史実を核として、「なぜカナン人ラハブの一族がイスラエルの中に共存しているのか」を説明する物語です。

 ラハブはとある町の娼婦でした。彼女は一族の大黒柱だったかもしれません。しかし町では貶められていました。鬱屈した日々の中イスラエル人偵察が客を装って娼婦ラハブのところに来ます。人生の一発逆転の機会です。彼女は自分の町の弱み等情報を売り(士師記1章25節参照)、対価として家族の保護を求めます。

 町を占領したイスラエルはラハブとの契約を履行します。その町の住民には厳しい統治をする一方で、ラハブの一族だけは優遇しイスラエルと同等の権利を与えユダの部族と共に暮らすことを許します。なお、ヨシュア記に報告されている、イスラエルによるカナン人大量虐殺も史実とは言えません(士師記1章19・27ー28節等参照)。約束の地においてイスラエルは先住民と共存したのです。

 勇気ある娼婦ラハブは、ユダ部族の始祖カナン人タマルに似ています(創世記38章)。ラハブはユダの地ベツレヘムの住民ボアズの母親です(マタイ福音書1章5節)。彼女の玄孫の一人がダビデ王。タマル、ラハブ、ルツ、バト・シェバという、イエス・キリストの系図に記されている非イスラエル人女性は繋がっています。JK