2024/09/18今週の一言

今回はラケルというアラム人女性。レアの妹、ラバンのもう一人の娘です。

 ラケルは女性たちの中で珍しく羊飼いと称されている人物です(創世記29章9節)。目の不自由な姉の分も働くことが求められていたのでしょうか(同6節参照)。また「顔も美しく、容姿も優れていた」と評されています(同17節)。

 従姉弟ヤコブが転がり込んできたときに、羊と共に野に居たラケルは最初に出迎えています。それ以来彼女はヤコブからの好意を受けていますが(同18・20・30節)、父ラバンはラケルと姉レアとをほぼ同時にヤコブと結婚させます。この父の仕打ちをラケルは心の奥深くで恨み続けていた節があります(31章19節)。また父の非道を結局是認した夫ヤコブにも根深い不信感を持ちます。

 ラケルは長らく子どもを授かりません(29章31節)。妊娠しづらい女性が出産する逸話は、サラとリベカに共通しています。また、自分の代わりに自分の召使を夫にあてがい、代わりに産ませる行為は、サラに酷似しています(30章3ー7節、16章2節以下)。サラの神、リベカの神、ラケルの神という線も重要です。

 神はこのラケルを覚えています(30章22節)。レアをみとめたヤハウェは(29章31節)、同時にラケルを覚え続ける神です。聖書の神は、階段状の単純な上下関係だけではなく、微妙な起伏のある複雑な上下関係をも視野に入れて、その時もっとも貶められ深みで苦しむ者の名誉を回復させる方です。ラケルは息子を生みヨセフと名付けます(30章23-24節)。「再び」「倍増」などの意味です。

再び妊娠し二人目の息子を生んだ直後に、ラケルは死にます(35章16節以下)。「彼女は彼の名前をベン・オニ(「私の苦しみの息子」の意)と呼んだ」(同18節私訳)。ラケルは息子ではなく夫ヤコブのことをベン・オニと呼んだとも解しえます。神はヤコブをイスラエルと名付けますが、ラケルは彼をベン・オニと名付け、それによって彼女を苦しめた夫を臨終の床で批判したのかもしれません。JK